2014.2.16 「日韓つながり直しキャンペーン2015」スタート集会開催

 

2014216日、東京で、「日韓つながり直しキャンペーン2015」スタート集会がもたれた。

はじめに韓国実行委員会の李錫兌さんが問題提起した。李さんは、日韓請求権協定が植民地支配を清算するものではなく、商業的な債権債務関係の解決のような形でおこなわれ、「慰安婦」問題や強制動員問題など重要な人権侵害について解決するものではなく、植民地被害に対する法的な責任については度外視されていた。しかし、二〇一二年五月の韓国大法院判決で強制動員被害者の賠償請求権が消滅していないとされ、韓国政府の対日過去史の政策の変化が注目される。このような韓国司法での積極的な判断が生まれてきた原因は、日韓の市民社会の運動の成果と評価した。

日本の実行委員会からは矢野秀喜さんが基調を提起した。矢野さんは、ダーバン宣言による植民地主義清算の動きを示しながら、韓国大法院判決の成果をふまえ、一年半のキャンペーン運動をおこない、植民地支配の清算をおこなう形で、日韓のつながり直しをすすめようと提起した。

続いて金昌禄さんが韓国大法院判決の意義と今後の課題を示した。金さんは韓国大法院判決の意義を、国民徴用令による徴用を不法行為としたこと、損害賠償請求権を請求権協定の適用範囲から除いたこと、消滅時効の抗弁を権利濫用として排斥したことの3点にまとめ、特にこの判決で、賠償請求権が消滅しなかったことが原告らの提訴によって「徐々に浮き彫りになった」と述べていることに注目した。

金さんは、強制動員による損害賠償権を今でも行使できるとした判決の意義を確認しながら、この判決が、韓国の法治主義の帰結であり、「1965年体制」の崩壊を示すものとした。「1965年体制」はその寿命が尽きたとし、それが市民運動の努力の産物であり、真の「正常化」に向けて、総体的な規範構造として「2015年体制」を築きあげることを呼びかけた。その体制の内実としては、事実の解明と認定、加害責任の構造解明と責任追及、被害に相応する補償、真摯な謝罪とそれに基づく持続的な行動、追悼、歴史教育などをあげた。そして市民の宣言を国家間の合意・条約とし、人類の価値に高めていこうと訴えた。

日本側からは庵逧由佳さんが日本の課題をあげた。庵逧さんは戦争責任論から植民地支配責任の問題へと認識が高まってきた経過を示し、日本でのこの問題をめぐるアジアの諸地域の人たちとの人間関係、地域やグループによる地道な真相究明・責任追及の運動、これらを支える思想としての戦争責任論、植民地支配責任論や諸研究などの知的な蓄積をあげ、これらを継承すべき財産とした。そして、日本政府が植民地支配の責任を認めようとしない発言や朝鮮民主義人民共和国を国家として認めない姿勢を示し、それらを変えていくべきとした。

集会の後半では、東アジア平和のための世界NGO歴史フォーラムの李三悦さんが連帯のあいさつをおこない、新たな2015年の体制構築に向けて、日本軍「慰安婦」について渡辺美奈さん、強制連行について山本直好さん、朝鮮学校無償化排除・ヘイトスピーチについて師岡康子さん、在韓被爆者について市場淳子さん、日韓会談文書公開について李洋秀さん、日朝国交正常化について北川広和さん、靖国問題について内田雅敏さんが問題の現状と課題を示した。

戦時の被爆によって解放後も病苦に苦しんできた在韓被爆者は、1965年の日韓条約・協定が在韓被爆者を救済するものではないことを問題として、すぐに活動をはじめた。その幾度にも及ぶ活動が、政府の不作為を問う20118月の憲法裁判所の決定につながっている。1965年の日韓条約・協定から、2015年で50年となる。その間、被害者への救済を求める運動がさまざまな形でくりひろげられてきた。その活動が21世紀に入っての韓国での強制動員被害真相糾明員会の設立、20118月の憲法裁判所の決定、20125月の大法院判決を生んだ。金昌禄さんが指摘したように、「1965年体制」は終わりを迎えようとしているのである。

この状況に、市民運動が2015年の新体制形成に向けて、どのような問題提起をおこない、内実を獲得できるのかが、問われている。今年の621日から22日にかけて、東京で「歴史NGO大会」が計画されている。集会への多くの市民の参加と、そこでの市民の議論を新たな日韓の協定や宣言へと反映させることが課題である。(竹内)