こどもたち、

この風土が育てたあなたたちに

        里 檀

 

 

 

   予言になると断言してもいい

   

   十八歳から「成人」とすると、国が決めようとしていたが、

   十八の子供たちは、それでは何を得るのか

   権利を散らつかせては、いいことがあるぞと

   言わんばかりだが、じつは義務を言い立てようとしているのだ

   彼らは

 

   義務の、その先に何があるか、

また、義務とは何へのものなのか、

   よく推理しなくてはいけない

十八歳も、傍らにいる大人たちも

 

   この国は、若者たちを恣意的に貧困へ追いやってきた

   今日には死なないという、そうした日々を作り出してきた

   金はなく、知識はなく、何によって糧を得ればよいのか分からない、

   そんな不安な状況を作り出してきた

生きるために、大切な人を守るために、

   残された手段は何かと、若者たちが考えて行き着く先はどこなのか

   

   この国に遍く他国の軍隊を配置し、

   こどもたちには、国による徳育を施し、

   戦わないとした憲法を変えようと試み、

   この国は人々の未来をどこへ持っていこうとしているのか

 

   予言になると断言してもいい

   この国は戦争を起こそうとしている

   この国、いや、政府の一部の者のみが、

   潤うために戦争をしようとしている

 

   君たち、あなたたち、よく考えなくてはいけない

   人を殺すということが戦争のすべてなのだ

   子供、老人、恋人、母、父、そうした人々を殺し尽くして

   彼らが取るべきだったものを奪う、それが戦争なのだよ?

 

   もうひとつ、考えなくてはいけない

そうした場面で、実はあなたたちは帰って来ないのだ

   大切な人の元には

映画やテレビではないのだから、

危ないところだけ飛ばして

   身体も心も以前のままに戻ることは有り得ないのだ

   よその国の、戦争から戻ってきた者たちが

   何を背負って今生きているのか、また、死んでいったのか

君たち、あなたたち、世界を見回さなくてはいけない

 

   あなたたちを愛している

   未来を紡ぐあなたたちを愛している

   生命あるものをやさしくみつめて穏やかに生を過ごしていく、

そんな日々を手渡したい

   だけど、

   そうした日々はあなたたち、

   あなたたちがみずから掴まねばならないと、

   先を往く私たちは伝える

これができることの、実はすべてでもある…

 

   あなたたちがやがて

この予言を覆してくれるよう

祈ることは最後の手段だ

   だから今は私の闘う形を見せておく

   ささやかな意地を見せておく

こどもたち、この風土が育てたあなたたちに

 

   

(二〇〇八・五・二)

 

 

 

 

 

『憲法第十二条

 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、

 国民の不断の努力によって、これを保持し

 なければならない』