1・30マイナンバー制度を問う 宮崎俊郎講演会

 

2022年1月30日、宮崎俊郎さん(共通番号いらないネット)を講師に、デジタル庁下のマイナンバー制度を問う集会がもたれ、オンラインを含め約100人が参加した。

宮崎さんはデジタル化に伴うマイナンバーの動きの問題点を以下のように示した。

マイナンバー制度の「利用拡大」から「再構築」への転換がすすんでいる。 マイナンバー制度は内閣官房・内閣府・総務省などが役割分担して所管してきた。それをデジタル庁がマイナンバー制度全般の企画立案を行う方向に検討がすすんでいる。マイナンバーカードの国内版パスポート化もすすむ。マイナンバーカードの交付枚数は8 1 日時点で交付率36% となった。運転免許証への利用は警察によるマイナンバー情報の大幅な利用拡大 に道を開くものとなる。

マイナンバー制度の狙いは、マイナンバーをキーコードとしてあらゆる個人情報を紐づけて吸い上げる仕組みを作ることである。マイナンバーそのものの秘匿性の低さを強調する理由は、マイナンバーをキーコードとし、個人情報を紐づけられるような利用形態を拡大しようとしているからである。医療・教育・資産管理への拡大がねらわれている。 医療分野に関してはマイナンバーカードの保険証利用は氷山の一角でしかない。教育も一生涯の成績・学歴の管理が狙われている。デジタル監視法で成立した金融機関口座との紐づけは明らかに資産管理の先鞭をつけたものである。もはや限定番号の域を超越した共通番号に変貌しつつある。

現在約 4 割の市民がマイナンバーカードを保有したが、目標値は 8 割でまだほど遠い。そこまで持たせないと実質的な強制力を持たせることはできない。マイナンバーカードのICチップの構造は以下のようになっている。 ひとつはマイナンバー領域、ここは番号法に規定されるデータの紐づけに利用される。もう一つが、非マイナンバー領域でマイキープラットフォーム、キャラは「マイキーくん」だ。ここは番号法の規定が及ばない 。この空き領域に、民間事業者独自に様々なカードアプリを搭載することが可能となる。マイナンバーカードに固執する推進派の真の狙いは、「マイナちゃん」ではなく、この「マイキーくん」だ。

デジタル庁体制の問題のひとつは、地方共通のデジタル基盤の構築にある。全国規模のクラウド=Gov-Cloud の創設とその移行に向け、自治体業務の標準化・共通化がすすむ。各自治体はその地域にあった福祉や住民サービスを提供してきたが、国のシステムに統一化され、国の出先機関となる。それは、地方自治の破壊である。

そこには、デジタル化によるデータベースを官だけでなく民にも開放して利用させようという構想がある。サイバー空間(ブラックボックス)によって現実社会が支配されかねない。個人情報保護体制の一元化もすすむ。個人情報保護法制を一本化して利活用を円滑にする法案をデジタル庁関連法と抱き合わせで提案しようとしている。データ共同利用権により、個人情報保護・自己情報コントロール権が奪われるのだ。

だが、2019 年分の政治資金収支報告書をオンライン申請したのは国会議員のうちわずか 1.13%だ。05 年のシス テム導入以来、36 億円の国費が投じられたのに、平井卓也デジタル元担当相も使わなかった。オンラインの方が 作業量が多くなってしまうからという。

人間の思考や行動はデジタルの0と1に還元できないものだ。AIの性能がいかに高まっても、人間の感情を表すことはできない。デジタル化は 自治体の縮小、自治体の解体、つまり公共性の解体につながる。

「デジタル化」を拒否する考え方、「アナログ選択権」も大切だ。