イラク派兵違憲訴訟を傍聴して

2005年3月4日午前11時から開かれた第3回法廷に行ってきました。42席の傍聴席が一杯になり、私たちは記者席に座って傍聴しました。入れなかった方もいたようです。

4人の原告の意見陳述があり、それぞれが、とても心動かされる内容でした。私などは、時々、涙が出そうになるくらい・・・。
ところが、最後に、裁判官から、これで結審としたいとの提案があり、
一瞬、何を言われているのかよく分からず、ポカンとしてしまいました。一方、被告の国側は何も発言せず、すでに、裁判の結論は、分かっているかのような態度でした。
結局、7月1日に次の法廷を開くことになりました。

閉廷後、原告団の反省会が行われ、この状況を打開しなくてはならないことなどが話し合われました。今後は、署名、裁判所へのハガキ陳情などの取り組みも考えて行こうということになりました。
原告の方々で、まだ陳述書を提出されていない方は、3月12日までに、ぜひ提出してくださるようお願いいたします。

先日読んだ本の中に、イラク派兵への反対運動が、改憲反対の試金石になると書いてありました。
イラク派兵違憲訴訟は、日本の将来を左右するとても重要な裁判だと思います。  
                                    (M)



「戦火のイラクは、いま」

自衛隊の即時撤退を求める
静岡平和集会

 2005年3月4日(金)、イラク人ジャーナリストのハッサン・アボットさんを招いて集会が持たれた(静岡労政会館)。主催は「イラク自衛隊派兵違憲裁判の会・静岡」。60名が参加した。

 この集会に先だち、午前中は静岡地裁で「イラク自衛隊派兵違憲裁判」の口頭弁論が開かれ、4名の原告がそれぞれの戦争体験や平和への思いを陳述した。ハッサンさんも「イラク自衛隊違憲訴訟・大阪」の原告に、イラク人として初めて参加している。

 ハッサンさんはイラク在住で39歳。バクダット大学卒業後、3年間の軍役を経て、15年前からフリーのジャーナリストとして活動している。日本にも数年間住んでいたことがある。2003年から1年間中日新聞と契約し「バクダット通信」を寄稿。イラクの「今」を日本に伝えてきた。

 集会は司会や会場からの質問にハッサンさんが答えるという形で進められた。通訳(学生)を通して、彼の真摯で切実なイラクの平和への思いが時間いっぱいまで語られた。

 以下、その一部である。

――イラクでの1月の選挙への評価は?

 私自身は選挙をボイコットした。それはアメリカやイラク暫定政府が信用できないからであり、立候補者について充分な情報が得られていなかったからでもある。選挙はブッシュがヨーロッパに行く前に行う必要があったので、何が何でもあの時にやらなければならなかったのだ。暫定政府は有権者の60%が投票したと言っているが、実際はもっと少なかっただろう。投票用紙を金で買ったとか言われているが、私は自分の目で見ていないので、そのことについては何とも言えない。結果はシーア派の勝利だったが、当選した人たちはアメリカ寄りの人たちだった。

――イラクの現状は?

 安全な所、安全な時間は何もない。学校も病院も店も全て、いつも危険だ。学校には机は一つもなく、一つの教室に100人以上の生徒が入っている。病院には充分なベッドや薬品がなく、ガンに冒された子供たちが苦しんでいる。

 国外からテロリストが入ってきて、その中には単にイラク人を殺すグループもある。正義というものはまったくない。裁判官が犯罪者を「有罪」にしたらその裁判官が殺されてしまうので裁判所も無力だ。サダム・フセインはひどかったが、ブッシュは最悪だ。来年の2月に選挙があるが、これが重要な意味をもつだろう。

――日本の自衛隊への評価は?

 (自衛隊のいる)サマワでは自衛隊の駐留で利益を得ている人たちがいる。彼らは自衛隊にいてほしいと望んでいるが、利益を得ていない人たちは自衛隊を好きではないし、いてほしいと望んでもいない。ましてサマワ以外の土地では自衛隊からは何の利益も得ていないので、いてほしいとは思っていない。逆に「多国籍軍」=「占領軍」の一部だと思っている。

―― 一番望む支援とは?

 薬・食べ物・ガソリンなどだ。石油大国なのにガソリンを手に入れるのに2日もかかる。軍隊はこういうものを供給できない。そして何より望むのは平和だ。軍隊は平和を作ることはできない。

――日本でのイラクについての報道はどう思いますか?

 基本的にアメリカのフィルターを通しての報道だ。またそうでない報道も、必ずしも真実を伝えていないものであることを念頭においておかなければならない。というのは、外国人記者は(危険なため)24時間ホテルから出られず、街に出て自分で取材することはできない。そこで他のチャンネル、たとえばインターネットや現地の人を雇って情報を得るなどするのだが、それらはウラのとれていない情報だ。メデイアを100%信じてはいけない。

 

――日本人外交官2名が殺されたが、アメリカ軍が誤って撃ったという説があるが。

 アメリカ軍は毎日無実の人を殺している。この事件では私は事件直後に現場に行き、「事件を目撃した」という男の人にも会った。彼は現場では「何も見なかった」と言っていたのに、警察に行ってアメリカ軍が同席の所で答えた時は「殺したのはテロリスト」だと言っていた。まったくのうそつきだ。

――ファルージャの虐殺については?

 知っている。アメリカ軍による虐殺を逃れた人たちから聞いた。アメリカ軍はイラク人を殺した。こんなことは許せない。私はシーア派だが、私たちはファルージャに薬や水を送った。そもそもアメリカが来る前は、シーア派とスンナ派はうまくいっていたのだ。今両派の大きな違いは、アメリカに対して賛成なのか反対なのかという態度だ。

――イラク社会における部族の位置付けは?

 イラクは族長国家的な所がある。大地主が力を持つ部族国家だ。サマワも族長が大きな力を持つ1つの部族からなっている。血縁からなる部族は政党や宗教より力が強い。先ほど述べたように私はシーア派だが、親戚にはスンナ派もいる。それでも何の問題もない。一つの部族だからだ。

――シーア派とスンナ派の協力の見通しはあるか?

 その可能性はあるし、(今後のイラクのためには)それしかない。

――最後に日本人にメッセージを。

 私はジャーナリストで英語もできる。この英語を使えば、今イラクではアメリカ軍のための仕事を得ることもできる。しかしそんなことをしたら私はイラクの人たちから信頼を失ってしまう。これはわたしにとってはとても大切なことだ。このことをまず申し上げたい。(拍手)

 私たちイラク人は日本人が好きだったし、日本の技術を信頼していた。イラク人と日本人はいい関係を築いてきた。しかし、日本の軍隊がイラクに来てこの関係を悪くするのでは、と心配している。私たちは日本人にイラクに来てほしいが、それは軍服を着た日本人ではない。(拍手)

 

 イラクで起こっていることを、文字通り生の声で伝えてくれたハッサンさんに、会場から大きな拍手がおくられた。また「イラクの子どもたちに医薬品を」とのカンパの呼びかけに5万円を超える会場カンパが寄せられた。集会後の交流会では、わたしたちに「憲法九条をもつ日本こそ世界に平和を広めることができるはずだし、イラクを平和な国にする手助けができるはずだ。日本政府は九条の持つ重要性を深く認識してほしい」との熱いメッセージを送った。 

               文責(井)