いま、子どもと学校があぶない
 2004年11月3日藤枝集会の報告

 

この集会の主催は「志太憲法を大切にしよう会」。藤枝市生涯学習センターには約80人が参加し、熱気あふれる集会となった。この日のメインゲストは太田さん。東京都の高校教員だった太田さんは、退職後も嘱託教員として都立高校に勤務を続けてきた。しかし今春の卒業式で君が代(「国歌」)斉唱の際、起立しなかったことで東京都教委から、雇用契約を一方的に破棄され解雇されてしまった。

 太田さんは、驚くほど元気で、明るく、力強い人だった。しかし語ってくれた東京の事態は本当に深刻なものであった。今春の大量処分の直接の引き金となった昨年10月の「10・23通達」から卒業式前の職務命令、当日の現認、解雇、減給、戒告など大量処分、処分者への再発防止研修強制など、すさまじい攻撃・弾圧が行われてきたことを改めて知らされた。

 東京では、国旗国歌法制定以来、君が代斉唱への圧力が強められ多くの学校が実施を余儀なくされてきていたが、それでも管理職が式場で式が始まる前に「内心の自由により強制はしない」旨を説明する学校が多かった(静岡では皆無。東京の教育労働者の抵抗がそれを可能とさせたのだ)。10・23通達はそれを一掃し、一人一人に職務命令を出して強制を徹底させようとしたものだった。以下の5点が、太田さんに対する校長の職務命令書の内容である。

 

1.式当日および前日までの準備において・・略・・職務を適正に遂行すること。

2.式当日は定められた時間までに式場内の指定された席に着席すること。

3.式の実施に際して妨害行為・発言をしないこと。

4.式次第「2 国歌斉唱」に際しては、式場内の指定された席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱すること。

5.服装は、卒業式にふさわしいものとすること。

 

さらに都教委は、監視の役人を全校へ派遣。太田さんは当日の式後、校長、教頭から不起立の現認を受け、12日後都教委から都庁に呼び出された。太田さんがあくまで弁護士の立会いを求めると「事情聴取拒否」だと決めつけられた。そして3月30日解雇(採用選考の合格取消し)決定、その夜都教委の人間が自宅へ通知を持ってくる。(不在のため郵便受けに入れていく。)2日後の4月1日からの解雇通知であった。
4月の始業式に太田さんは生徒に次のような離任の挨拶をしたという。「3月の卒業式の国歌斉唱の時、起立しなかったことを理由に皆さんに数学を教える仕事を奪われてしまいました。皆さんにお願いが2つあります。1つは、自分の命を大切にして下さい。そして他人の命も大切にして下さい。2つは、何が正しく、何が間違っているのかを、自分の頭で考えられるように、しっかり勉強して下さい。」

 
 今、太田さんは闘っている。一つは日の丸君が代の強制に対して、もう一つは臨時雇用者への安易で根拠ない首切りに対して。でも太田さんから少しも悲壮感は感じられなかった。にこやかで明るくて歯切れがよくて・・。静岡でも今後どのような事態が出てくるのか全く予断を許さない。あの「日本中の学校で国歌を斉唱させるのが私の仕事」などと園遊会で胸張った米長邦雄やあの石原都知事の東京だから特別なのだと考えるべきではないだろう。憲法の平和主義を変えて自衛隊を海外に展開させ戦争に参加させることができる国づくりを進め、それを支えるために学校現場に国家主義を注ぎ込み子供たちに愛国心を植え付けていこうというのが、小泉を先頭とする日本の政府、与党、民主党、経済界などの大きな動向だからだ。
この日の太田さんの話を聞いて、君が代不起立を堂々と明るく貫く大切さを感じた。

 集会は、その後藤枝の高校のHさんと障害児学校の講師をされているSさんの興味深い話が続いた。Hさんは十数年前東京都の中学校から静岡の高校へと採用試験を受け直して移ってきた人。その時静岡県の採用試験面接で、「組合に入りますか」という質問に加えて、「日の丸、君が代についてどう思うか」という問いがあったという。Hさんは上手にしのいだようだが、こうした質問を採用試験ですること自体大問題であり、憲法19条の思想及び良心の自由に明らかに違反することだ。今もそうした質問を静岡県教委がしているのかどうか確かめる必要があるだろう。またSさんは、中学生の娘さん持つ母親の立場から、こわばった現在の管理主義教育の実態を明らかにし、その問題点を浮き彫りにしてくれた。今より少しでも自由で柔らかな学校にしていくための努力は、きっと、日の丸・君が代の強制をはじめとする国家主義や教職員への締め付け強化との闘いとつながるものだろうと感じた。

 教員にとって学校の中で「今よりもっと自由でやわらかな学校にしようよ」と主張するのは、君が代に反対すること以上に難しいことなのだ。

 三人の話の後、幾人かの人が発言したが、多分もっとずっと多くの人たちが自分の意見や体験を話したり、質問したりしたかったのではないかと思う。こんな会をまたやってほしいとみんなが感じたのではないだろうか。                                                            
                                 (山村)

 

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