高まる空港反対の声 
          2000年4月

 静岡県(知事・石川嘉延)は約2兆円の起債(借金)をかかえ、さらに今年度予算では1100億円の財源不足をみこんでいる。このため、県は職員の賃金カットや既存事業の大幅見直しをすすめている。しかし、建設に5000億円はかかると予想されている静岡空港建設(第3種空港)については、やめようとしない。
 静岡空港はお茶の産地で有名な榛原郡に建設されようとしている。1980年代はじめ、県西部の財界から空港建設の声があがった。県は空港設置に動いたが、県中部と東部の政財界の力によって県西部への誘致は失敗し、県中部の大井川の西側の丘陵地帯である榛原へと設置されることになった。1987年のことである。突然の空港建設予定地の決定に榛原町坂部の現地住民の多くが反対した。坂部の茶業民たちは200人でデモをおこなうなど反対の声をあげ、予定地周辺には反対の看板が数多く立てられていった。

県の空港建設に反対して、90年代に入ると榛原オオタカ・トラストの会、空港に反対する地権者住民の会、空港ノー吉田町民の会、空港に反対する地権者目治体議員の会、空港はいらない静岡県民の会などがつぎつぎに結成された。
この静岡空港建設にはさまざまな問題点がある。

●県は県民の年間空港旅客需要を178万人と予想するが、それは過大な推定である。赤字経営空港となって借金が増えることは多くの地方空港の例からもあきらか。地方空港はバブルがはじけ「冬の時代」。

●海外への定期便確立は困難。東京名古屋大阪へと結ぶ路線もない。地方空港と結ぶだけの空港の利用率は低い。


●榛原の丘陵の山を削り、谷を埋めるという巨大盛り土工事には無理がある。工事費は1900億円というが実際には5000億円といわれている。工区には新幹線のトンネルがあり、トンネル補強工事も必要となる。

●自然度7〜9とされる豊かな自然は破壊され、オオタカをはじめとする貴重種が絶滅する。

●地権者の反対の意志が強く、全用地の買収は絶望的。強制収用を適用しての建設は無理。滑走路予定地には地権者の土地があり、未買収の土地が虫食いのように残っている。

●県財政は借金2兆円(県民1世帯当たり220万円)、まさに破綻寸前である。ゼネコン奉仕の赤字空港建設で県の倒産は早まるばかり。工事を請け負うゼネコンは鹿島と大成。

 このような問題点をかかえる空港建設に対し、反対する市民は、95年オオタカの森トラストを設定(現在1600本)、空港予定地での共有地を拡大、96年国に対して空港設置許可の取り消しを求めて提訴、'97年県に対して公金支出差し止めを求めて提訴した。97年には反対派のリ−ダ−島野房巳さんが静岡空港反対を旗印に、県内市民団体の支援を受けながら県知事選に出て善戦した。
 98年11月、県は用地買収が完了する前に本体部分の起工式を行い工事を開始した。これに対し反対住民は滑走路予定地の中央部分で、反対集会をひらき山の上から起工式会場にむかって、空港N0!の声をたたきつけた。約1年間の工事で、榛原を象徴する高尾山の一部はすでに削られている。2000年に人り、県は仮調整池確保のためにオオタカの営巣木を含む林の伐採を計画し、はじめに営巣の枝を切り落とした。反対住民は阻止するための抗議と監視行動を強 めた.

 2000年2月13日には神奈川、滋賀からの参加者を含め80人が参加してオオタカの森フィ−ルドワ‐クがもたれた。昼、参加者の上空をオオタカが気流に乗って飛翔した。ゼネコンを保護しオオタカに冷酷な静岡県の姿勢に対して県民からの批判の声が高まっていたにもかかわらず、2月20日に県はオオタカ営巣木一帯を伐採した。

 地元、坂部小学校校歌には「朝けに仰ぐ高尾山、夕日に映える坂部川、みよや無辺のけだかさを、きけや美妙のささやきを……」とある。県のオオタカへの冷酷さは県民への姿勢そのものである、、県はこの地の自然の「けだかさ」と「ささやき」をうけとめて、一刻も早く建設を中止すべきである。


1.’98年11月20日 静岡空港反対現地集会

2.’99年9月11日 浜松市での反対集会でアピールする空港ノー吉田町民の会・島野さん・地権者松本さん

3.2000年2月 静岡県はオオタカの森トラストの会メンバーによる抗議の横断幕の前にフェンスをはり立ち入りを禁止した

4.2000年2月13日 オオタカの森の家に集合し、オオタカの森フィールドワークがおこなわれた。オオタカの森トラスト会長(桧林さん)のアピール

5.2000年2月 静岡空港建設工事で削られた高尾山。写真中央部左側にオオタカの営巣木がある。

6.坂部住民の意思表示



                                       (竹内)