歴史歪曲NO!韓国民衆の声
劉徳相さんの話
01・6.20集会での発言(文責:NO!AWACSの会)

●軍拡のなかでの歪曲教科書の登場

 さきほど浜松基地を案内されAWACS・広報館などの軍拡の状況について学び、市教委への
申し入れにも参加した。
 ここでは教科書問題をテーマに発言する。
 歴史は小説のように創作するものではない。歪曲された歴史を学生に伝える教科書は望ま
ない。なぜ誤った記述で教育させるのか、その背景を考えることが大切だ。
 日本は過去にアジアを侵略し、2千万人の犠牲者を生んだ。日本人も300万人死んだ。
朝鮮戦争でも300万人が死んだ。戦争は人類の一番の悲劇だ。けれども日本は謝罪や賠償
をせず、歪曲をはじめた。それは戦争の美化であり、再び戦争をおこすことにつながる。日
本に来てたくさんの人と会ったが、再び戦争のおきることへのおそれからいまの運動がある
ように思う。

●民衆の記憶に残る侵略

 日本は1905年に保護条約を強制し、1907年に軍事権を奪い、1910年に併合条
約をデッチあげた。「植民地支配でよいことをした」というが、それなら反対運動はおきな
いだろう。1919年の3.1独立運動では1万5千人余が殺され、投獄は3万余に及び、
多くの建物が破壊された。日本の支配に我慢できず、抵抗運動がつづいた。 慰安婦問題を
みれば、これは女性を連行し性的虐待を与えた残酷なしうちだ。3年前、国連人権委員会は
日本政府に慰安婦問題の解決を公式に要求したが、日本は解決しようとせず、今度は教科書
から削除した。
 私たちはこどものころから父や老人たちから生々しい記憶を聞かされてきた。裏山には抗
日運動メンバーの所在を吐けと訊問され、殺された人々の跡があったりする。家庭から銅の
箸・お椀を日本軍の武器作りのために持っていかれた。韓国社会での日本の印象は悪かった
が、時代とともに交流は深まり、文化開放がさかんになった。

●国際的拡がりをもつ抗議運動

 韓国の市民団体は結集して歪曲教科書の是正問題をしている。なかには日韓条約を破棄し、
国交断絶も辞さないという意見もある。韓国での運動は一時的なものではなく、国際的連帯
をもって全世界的にすすめられていくだろう。先日も71カ国の日本大使館前で一斉抗議行
動がとられた。
 韓国内では、ドイツ政府がナチスの戦犯処罰を現在もおこなっていることから、ナチスは
憎むがドイツ国民を憎みはしない。現在の日本の歴史歪曲は特定の人々によるものであり、
日本の良心的な人々の是正運動の存在も知っている。

●歪曲の背後にある軍事戦略

 なぜ歪曲するのか、その背景について考えたい。
 歪曲は日本の軍国主義化、平和憲法の改悪の動き、米軍事戦略の展開のなかでおきている。

 米の軍事戦略をみれば、5月にミサイル防衛戦略を示し、軍拡をすすめようとしている。
米は南進戦略をすすめ、新たな軍事基地建設をねらっている。日本と韓国を前進基地とし、
フィリピンやベトナムにも基地をえようとしている。
 それを実行するために米韓日の軍事協力が必要になっている。そのために、日本の平和憲
法をかえ、新ガイドラインにより、日本の正規軍が海外で共同の軍事行動ができるようにし
ようとしている。米は日本へと海外作戦の可能な兵器の購入をもとめ(たとえば空中給油機)
共同軍事訓練を拡大させ、国連の平和維持活動での軍事参加をもとめている。

 韓国の民衆運動は韓国内での軍事費、米の国防費縮小や、基地撤去を求めている。
 日本は経済危機にあり、浜松でも学んだが、たくさんの野宿者を生んでいるのに、かれらを
救わず、米の高価な武器を購入しようとしている。
 歴史歪曲の背景として以上のことも考えるべきだ。

●右傾化のなかでの連帯を

 最近韓国内で民主労総や民衆連帯を名ざしし「左翼が国をおびやかしている」という発言が
あった。米ブッシュ政権成立直後、イラク攻撃がおこなわれた。改憲を掲げる小泉首相への高
支持率も問題だ。歪曲教科書をすすめるグループは権力と癒着している。米日韓に右傾化の流
れがある。
 今日、市教委に申入れし、学校教育部指導課の担当者と話をした。かれは一般的な戦争はよ
くないといったが、過去の日本の戦争について善悪の判断はしなかった。だれもが平和を愛し
戦争に反対するというが、正しい歴史を教えることが戦争への道を止めることになるのに。
 いまこそ正しい歴史教育による日韓の友好・交流をこれまで以上にすすめよう。多くの努力
が必要だ。
 日本の良心的な人々は国際的な未来をもつ人々だ。皆さんとともにがんばれば、歪曲をただ
すことができると考える。

*集会では浜松・静岡の現場教員の発言、元兵士からの「政府にあやつられず平和を守ろう」
とのアピールがあった。つくる会(民間右翼)が政府内部に根をはり、一体となって歪曲をす
すめている現実、県教委内にも「つくる会」支持者が存在することなども明らかにされた。

 アピール採択ののち、韓国の民衆抵抗歌「朝露」「ソウルからピョンヤンまで」「あなたの
ための行進曲」をNO!NO!Bandの演奏で合唱し、集会はおわった。

教科書問題で浜松市教委交渉 01・6.20

 6月20日、市教委を訪れ、教科書問題で交渉した。
対応したのは市教委学校教育指導課副参事の内崎氏。申し入れ文を読み、説明した
あと、行動を共にした劉徳相さんが発言。

「韓国では教育者は尊敬されている。知識があり、良心的であるからだ。この状況
は日本でもかわらないと思う。歴史教育は事実を述べて後世に伝えるもの。誤りが
あれば是正して直すものだ。今回の歴史歪曲問題では、日本が自らの手で歴史を創
作し歪曲していることを危惧している。それは次世代にとって望ましくないことだ。

 過去にも歪曲問題があったが、今回は質的にちがうと考える。日本の侵略戦争は
アジア民衆2千万人を殺した侵略行為であった。日本政府はそれを反省せず今度は
歪曲している。日本が侵略戦争を美化することは美化にとどまらず、戦争の再発に
つながっている。

 日本人も戦争再発は望まないだろう。正しい方向に是正されることをここにもと
める。

 韓国民衆はとても憤慨している。なかには1965年の韓日条約を破棄し、国交
断絶をという人もいる。他国のNGOとも連携し、韓国内だけではなく、国際的な抗議
行動が始まった。6月12日には71カ国の日本大使館前で抗議行動がおこなわれたが、
これははじまりにすぎず、この動きはもっと広がるだろう。

 良心的教育者が先頭にたって日本の教科書の歪曲を正してほしい。とくに浜松の
教育者が先頭にたってほしい。

 ドイツでは55年前の戦争犯罪を今も追及し処罰している。このため韓国の人々は
ナチスを憎むがドイツ国民を憎まない。日本もそうあってほしい。

 この発言をふまえ、対応した市教委に私たちは「過去の日本の戦争はまちがって
いたと考えるのか」を質問した。

 内崎氏は「はっきいいえない」「そのときの状況は理解していない」「知らない
から」と答えた。

 戦争全般は「よくない」としながら、日本の過去の戦争について善悪の評価をお
こなわない姿勢を市教委幹部はしめした。「韓国への植民地支配についてはどう考
えるか」と追及するとこれに対しては韓国人を前に「まちがっていた」とやっと答
えた。

 このような市教委の姿勢は「つくる会」の日本の戦争を肯定しアジア解放のもの
とする考えを容認することになる。

 私たちは指導課に再度、過去の日本の戦争についての価値判断を示すよう要求し
た。

 劉さんは最後につぎのように発言した。
「福岡の教委を訪れたとき問題はあるが、日本人も良心的な人がいると思った。し
かし、浜松では大変失望した。戦争は特定の人々が特定の目的をもっておこすもの。
それにより、破壊と民衆の犠牲が生まれる。戦争をおこすことは許せないことだ。
 市教委は日本の戦争について責任ある発言をしない。とても残念だ。憤りを感じ
ている。韓国には反日感情が大きくあったが、良心的な人々の努力で文化開放にす
すんできているのに。国際化のなかでは正しい歴史認識による国際理解・友好が必
要なのだ。

 今解決しておかなければ収拾できないことがあるのだ行動しない良心は良心では
ない。行動する良心を持ってほしい。

 劉さんは怒りを抑えながら、日本の過去の戦争をまちがいと認めない市教委幹部
に対しこのように発言した。 日本の侵略戦争はアジアの人々に対し「殺し、奪い、
犯す」ものであった。「慰安婦」問題は、侵略戦争の犯罪性を象徴している。

 「日本の戦争はまちがっていた」の一言がいえず、スマイルで対応している市教
委幹部の対応は教委への市民の不信感を増幅させるばかりである。 映画『プライ
ド』をかつて市教委が推薦したように市教委内部には過去の戦争を肯定する勢力が
根をはっているように思われた。