浜松市教育長 様                                2005年6月6日                        

浜松市教育委員会委員長 様                                                                                        
浜松市教育委員 様                      浜松月桃の会 人権平和浜松

                                                                                                                    

 

教科書採択に関する要請書      

                         

 来年度の中学校歴史・公民教科書のうち扶桑社版の教科書は、以下に記すように、その内容が戦争を美化し、日本国憲法の理念・原則に反し、アジア近隣諸国との友好を妨げるものであると考えます。それゆえ、浜松市の公立中学校では採用されるべきではないと考えます。中学生には平和な世の中をつくる基礎となる教科書が必要です。教科書採択にあたって、アジアの友好平和と憲法・教育基本法の原則をふまえ、良識ある判断をすることを要請します。

 

1 扶桑社版歴史教科書(「新しい歴史教科書をつくる会」関係者編集)は戦争を美化し、史実をゆがめています。

 数千万のアジアの民衆を殺傷したアジア太平洋戦争を、「日本の防衛戦争」「アジアの解放に役立った戦争」としています。また、沖縄・広島・長崎など日本の戦争被害への記述も少なくなっています。この内容は史実をゆがめ戦争を美化していると言わざるをえません。この教科書は中学生に過去の戦争を正当化する歴史認識を植え付けるものです。

2 同社版歴史・公民教科書(「つくる会」)は日本国憲法の諸原則に反するものです。

 戦争の美化は憲法の「平和主義」の否定です。国益を優先し国民一人ひとりの主権を軽視するような記述は「国民主権」の否定です。ジェンダーフリーを敵視し、性的役割分担を押しつけるような記述は「基本的人権の尊重」の軽視です。このような内容では、中学生が人権を基調とする憲法の精神を尊重する視点をもてません。

3 同社版歴史・公民教科書(「つくる会」)は近隣諸国との友好発展を妨げます。

 現在、県西部には多くの外国人とその子どもたちが暮らし、県西部を拠点にした多くの企業がアジア各国で活動し、多くの日本人が外国で生活しています。国際的な繋がりでは信頼関係が大切です。日本が信頼されるためには過去を反省する真摯な態度がなくてはならないと思います。しかし過去の戦争を正当化する歴史観に立ったこの教科書を採択するのであるのなら、歴史への真摯な態度は疑われ、友好の前提となる信頼関係は築けません。この教科書は日本政府の「近隣諸国条項」に反する内容を持っています。

4 同社版歴史・公民教科書は、ルール違反を重ねて検定に合格した教科書です。

 扶桑社版(「つくる会」)は、申請図書(「白表紙本」)を教員や教育委員会関係者に配布し事前宣伝をしました。これは検定規則違反であり、文科省の再三の指導を無視したものです。本来ならこの段階で検定不合格になるべきものです。また、「つくる会」前副会長・高橋史郎氏が埼玉県の教育委員に任命された時、高橋氏は「扶桑社版教科書の監修者ではない」と繰り返し主張しましたが、実際は公民教科書の監修者だったことが明らかになりました。作成側と採用側が同一人物となることを隠すためにウソをついたのでした。これは教科書の内容以前の信義の問題です。このような人物や会社が作成した教科書を採択すべきではありません。

 

要請項目

 

一 浜松市内中学校での社会科教科書選定にあたり、扶桑社版教科書(「歴史」「公民」・「新しい歴史教科書をつくる会」編)を採用しないこと。

一 教科書採択にあたっては、憲法・教育基本法の原則を踏まえアジアとの友好をすすめるものを採用すること。

  一 教科書採択にあたっては、日々子どもたちと接している現場の教員の意見を十分  に尊重すること。