不二越社長様                             201038

                                             人権平和・浜松

       不二越による朝鮮人強制労働問題の解決を求める要請書

 

 戦時下、不二越は陸海軍の管理工場となり、機関銃などの軍需生産で利益を上げ、企業規模を拡大し、不足する労働力を朝鮮半島からの強制連行によっておぎなおうとしました。不二越に連行された朝鮮人は徴用工約500人、女子勤労挺身隊約1100人の1600人ほどといいます。連行された人々は奴隷的な労働を強いられ、その賃金は不払いでした。20103月の第2次不二越訴訟の高裁判決でも、連行は国と企業による「共同不法行為」であり、その行為には「債務不履行」があると、認定されています。

 これまで不二越は、自らも関与した強制連行を国の責任に転嫁し、第1次和解にあたっては謝罪もせずに、訴訟を「不毛な対立」とみなし、そのうえで「解決金」を支払いました。2002年に他の被害者が未払い金の支払いを求めて不二越を訪問すると、手足を持って社外に放逐するという行為にまで及びました。このような不二越の対応は、連行の不法行為と賃金未払いに対しての反省のないものでした。そこには、強制労働被害者の尊厳回復に思いを馳せる姿勢が全くありません。

 不二越は旧軍の軍艦那智に由来する商号を今も使い続けています。NACHIという響きが欧州ではナチスドイツによる独裁と大量虐殺につながるイメージを持つにもかかわらず、ナチの商号でグローバルな展開をすすめることを恥じません。不二越の1年の売り上げは、海外での売り上げを含め、1000億円を超えるようになりました。そのなかで、不二越の歴史的・社会的責任はより大きなものとなり、自らが関与した強制労働への処理と被害者の尊厳回復への取り組みは、全世界が注目するところとなっています。

 連行された朝鮮人の賠償要求は、1992年の提訴から20年目を迎えようとしています。不二越は第1次訴訟の頃から、請求権は日韓条約で解決済みという主張をおこなってきました。日本政府は1991年に、日韓条約では個人の請求権は消滅していないといっていたにもかかわらず、戦後補償裁判がはじまると、裁判での請求権まで否定するように変わりました。不二越の現在の無責任なありようが、政府の見解をも戦争被害者個人の請求権まで否定する方向に変えてきたのです。不二越はそのことの責任を負うべきです。

 被害者である原告の請求が法廷で棄却されたとしても、不二越による強制連行・強制労働での「不法行為」と「債務不履行」と歴史的責任は消えることはありません。今こそ、その歴史的責任をとり、被害者の要求に答えて過去の清算をおこない、被害者の尊厳を回復すべきです。

 よって以下を要請します。

一、   社長は連行被害者と面会し、過去の不法行為と債務不履行を謝罪し、賠償金と未払い金に当たるものを支払うこと、

一、   「朝鮮人労務者に関する調査」、「供託金明細書」等、不二越の強制労働関係の全資料を公開すること

一、   全ての強制労働被害者の尊厳回復と救済にむけて、政府・経済団体に立法措置を要請し、協議すること、また、そのための賠償基金を設立すること

一、   個人請求権の存続を確認し、日韓条約で解決済みという見解を撤回すること

一、   過去の清算に向かう企業の例を研究し、NACHIの商号を廃止すること

一、   不二越での強制労働の史実を記した冊子を作成し、不二越社員・富山市民に配布すること、また、謝罪と友好の碑を建設すること

一、   強制労働の廃止や人権保護などを求める国連のグローバルコンパクトの趣旨に賛同し、社会的責任をとり、隣国との友好と持続可能な社会の実現を求めること、そのために、過去の強制労働問題の解決を第1歩とすること。また、富山県内各地の強制労働と未払い金について調査し、率先してその解決に向けて活動すること

 以上の要請項目について真剣に検討し、文書で回答されることを求めます。