●浜松広報館への抗議

 514日、昨年4月に開館した航空自衛隊浜松基地にある浜松広報館
に対し抗議行動を行った。この行動には、郵政全労協の長崎広島大阪の
青年労働者も参加した。昨年の抗議の際には申し入れを広報館の前で行
い基地側も館前でそれを拒否し、基地前での抗議の申し入れとなった。

 基地前で対応した基地対策室の係官は申入れに遅参し、申し入れの際に
「何をすればいい」「この文書をどうするのか」などと申し入れの意味
もわからぬような対応に終始。参加者から「いいかげんにしろ」「まじ
めにやれ」と怒りのの声があがった。

 広報館問題では52S日、浜松市内の基地近くの小学校がグループ速
足のコースに広報館を組み込んだことに対して市教委と当該枚長に抗議
の意思を伝えた。

●日本山妙法寺の平和行進、浜松へ

 6月4日、日本山妙法寺の平和行進が浜松基地へと到着した。私たちは
基地近くで「
NO!空中給油機」の横断幕をもって出迎え、基地前での平
和アピールに参加した。これに対し警察は、
NO!AWACSの会の横断
幕に対し、「この幕は公安条例違反」「NO!AWACSの会の参加は道
路使用申請にない」「横断幕をやめろ」などと介入してきた。主催者の妙
法寺は、
NO!AWACSの会をはじめ浜松の市民は仲間であり、横断幕
に問題はない、警察は行進団に介入してはならないと抗議、私たちも基地
前での平和アピールへの不当な差別的な介入に抗議した。

 行進団はマイクで警察の対応に抗議し、自衛官へも反戦平和を訴えた。
 横断幕は最後まで提示された。

●広報舘展示の批判

 浜松広報館の入場は無料である。この館の建設に約60億円が費された。
 広報館展示格納庫入口には、ブルーインパルス姿の
F86Fがある。ブルー
インパルスは戦技研究と広報を担っているが戦技研究とは交戦力の強化
であり、その広報は交戦権行使につながる宣伝である。
F86Fは浜松周
辺で墜落や不時着などの事故を20回近く起こしている。この広報館のシ
ンボルは憲法違反と事故史を示すものでもある。

 展示格納庫に入ると「見て触れて体験」の名のもと、戦闘機服を着用し
て戦闘機と記念撮影するコーナーがあり掲示された記念写真にはナチス式
敬礼をして戦闘機の前に立つ子供の写真もある。ここは子供たちに戦闘機
服を着用させ馴らすためのコーナーである。私たちはこの写真の撤去を求
めているが、館側はとろうとしない

 最近、戦闘機の操縦桿をおいたシュミレーターが格納車におかれた。
 この飛行体験は初級・中級コースとなっているが説明板を見るとミサイル
レバーの使用は上級者のみとされている。ミサイルレバーを押したければ
軍隊に入れということなのだろうか。格納庫に展示された軍用機の説明板
から今年になって三菱などの製作会社名が消えてしまった。格納庫での展
示機の数はゼロ戦を含め倍増している。

 展示館の受付近くには「雄風」という旧軍人の像がおかれている。特攻
隊の賛美といわれても仕方のないものだ。展示館の入り口や各所に監視カ
メラがすえつけられている。

 派遣会社から送られた受付案内女性のスマイルとともに監視カメラが入
館者の動きを追っている。

 展示室の1階にはバーチャル司令室があり、少しいくと1階のメイン展
示であるF2(FX2)がある。「支援戦闘機」として展示されているが、
米軍のF16をモデルとした日本製の対地攻撃機である。
 米軍はAWACSの管制下、F16を他国頑土への対地攻撃に使っている。
F12には空中給油装置がつけられる。展示はハイテクを賛美しているが、
他国を攻撃しえるF12の問題点についてはふれていない。1階にはF1
もある。
 2階には空自の全機種の模型が並んでいる。その中央部に1998〜99
年と浜松基地に配備されたAWACSがある。AWACSが「空飛ぶ司令塔」
とよばれ、海外での指揮能力をもっていることは記されていない。対空機
関砲の実物もおかれている。この階から「空への憧れ」をあおる戦闘機飛
行映像館へといけるようになっている

 3階にはF15戦闘機のシュミレーターがおかれ、操縦桿をゲーム機のよ
うに子どもも操れるようになっている。シュミレーターでの操作をおえる
「君はベストガイだ」などと記された評価表が出てくる。

 シュミレーターの近くには浜松基地のジオラマがある。
 この数年AWACS配備にともない基地内での施設の建設がすすみAWACS
納庫や警戒航空隊関連施設、ジェット燃料施設、レーダーなどが次々に
建設さ
れているが詳かな表示はない。

 過去、陸軍爆撃の拠点であったことなどの基地の歴史は記されていない。
 AWCS配備によって浜松基地は実戦中枢拠点となったのだが、このよう
な危険な側面を知りえる表現はない。

 実戦感覚は喪失され、バーチャルでスペクタクルな感覚が増幅されていく。
 3階には小さな図書室があり、各隊の広報紙や軍事本などがおかれている。
 藤井治夫の本が1冊あったが、戦争の原因やその責任を問うもの、軍拡を
批判するものはほとんどない。

 配布用に置かれていた1994年版の「知っていますか日本の防衛」をみ
ると「他国を攻撃するために使用される兵器は憲法で持つことを禁止され」、
また非核三原則もあり、日本は「決して軍事大国ではありません」(P17)
とあった。ここでは自国を「軍事大国」とする認識さえ否定されているのだ。

 出口には「ミュージアム・ショップ」があり、軍用機グッズが子どもた
ちをターゲットにおかれている。防衛弘済会の担当という。

 屋外をみると軍用機やミサイルの彼方にすべり台まである。時計塔の上に
は監視カメラがあり入口から館の入口までを監視している。開館にともない
遠州鉄道の定期バスが運行したが、採算がとれずに廃線となった。

 しかし、関西、関東を含め休日には大型バスがやってくる。開館3ケ月で1
0万人余が訪れたという。

 基地側はAWACSが配備されて以来、基地外周を緑の鉄板や白いパネル版
で目かくしするようになった。格納庫近くに駐機しているAWACSは基地北
方からしか見られなくなった。

 警戒航空機隊舎の上には巨大な監視カメラがすえられ外周を監視している。
 広報館の「見て触れて体験」の「公開」とは裏腹に、新ガイドライン安保の
下で浜松基地の実戦基地としての秘密性は高まっている。


戦場への道にNO!を 

 浜松広報館の展示では軍備の拡大は容認され、軍事同盟や軍隊が肯定されて
いる「軍事大国」としての認識は否定されている。

 過去の侵略戦争において派兵拠点とされた歴史は全く記されていない。
 浜松基地が陸軍の爆撃部隊の拠点となったこと、この基地の建設に朝鮮人労働
者が投入されたこと、重慶爆撃の陸軍基幹部隊を出したこと、毒ガス航空戦秘
密部隊(三方原教導飛行団)の攻撃訓練が行われたこと、沖縄義烈空挺隊の操
縦を担うなど特攻作戦に動員されたことなどは全くふれられていない。

 加害や事故の歴史だけでなく、陸軍航空部隊があったことさえも示されてい
ない。

 浜松基地の成立、現在の防衡の任務や「国際協力」ハイテク兵器の賛美、そ
して子どもたちを軍機や戦場に馴らすための展示が並んでいるが、戦争の原因
やその責任を問うもの、アジアの視点を示すものはない。歴史を反省し、戦争
を枇判する視点はないのである

 広報館は戦闘機へと人間の心をすいあげ、軍事組織への共感を増幅させる
“体験とコミュニケーション“の場となっている。憲法の平和主義・平和的生
存権や人間の尊厳・生命の尊重へのまなざしをここで深めることはできない。
 ここは“平和のための空間“ではなく”戦場への招待空間“である。


 新ガイドライン安保の下での軍拡にともない開館したこの広報館は日本の戦争国家
化を象徴している。すでに海自は佐世保に広報館をつくり、陸自は朝霞での建設を計
画している。
 また呉では海事博物館への海自広報施設の同居もねらわれているという。
 もとめられているのは軍拡を肯定し戦場へと子供たちを勧誘する空間ではなく、戦争
を問い平和への想いを深くする空間である。