梅香里・全晩奎(チョンマンギュ)さんの話


●2001年4月3日

 韓国京畿道華城郡雨汀面梅香里で米軍爆撃場の撤去をもとめ活動している全晩奎さ
んが名古屋で交流会をもちました。全さんは現地の住民被害対策委員長として活動し、
昨年6月には米軍による誤爆事件に抗議して基地内に入って抗議行動をおこなってい
ます。

 以下、全晩奎(チョンマンギュ)さんの話の要約です。   

 梅香里はかつて「古温里」とよばれていました。肥沃な丘陵地だったのです。村の前
には干潟があり、数百種の魚貝類が生息し、西海岸一の黄金漁場なのです。丘には
梅の木の群落があり、梅の香りが海風に乗って村全体にただよったため、梅香里と命
名されました。人間にとってここちよくあたたかなこの村を米軍が占領し、クーニー射撃
場と名づけたのです。今では米軍による爆撃と騒音と煙がただよう村になってしまいま
した。地図をみると母親の乳房にも似たこの西海岸の村が米軍によって蹂躙され、住民
の生存権が奪われているのが現状です。この惨状は7千万民族の生存と平和の問題
であり、民衆の連帯によって米帝国主義の軍事的暴力・戦争の訓練に反対していくこと
が必要です。

 私は漁民にすぎません。カモメを友とし、魚貝をとること、それが楽しみであり幸福で
す。そのなりわいを放棄して、似あわぬ反米軍基地の闘士になりました。韓国政府と米
軍による人権蹂躙によって、私は平和と自由の貴重さを知ったのです。平和を愛する
信念と正義の連帯をもってたたかいをすすめ、平和を求める韓国・日本・沖縄の民衆
とともに歩みたいと思います。

 ここで示すオレンジの布は米軍が訓練中に示す旗と同じ色のものです。2000年の
6月2日に私は訓練に反対して鉄条網の中に入り、その旗をズタズタに破り、40日間
監獄に閉じ込められました。梅香里の人々の想いをつづった字を韓半島の形にしてグ
ッズをつくり、ハンカチとして人々に配布して闘争の一助としています。

 地球上で50年にわたり、戦争=爆撃をしている土地があるでしょうか。梅香里は行
政的には韓国のものですが、実質的には米軍の土地であり、空襲をほうふつさせる爆
撃がおこなわれています。ここは、仮想敵としての北朝鮮の土地とみなされてもいるの
です。

 大地と漁場に住民がいます。この上でパイロットに実戦訓練をさせ、低空飛行での空
爆をします。誤爆、不発弾、少年少女の死や手足への傷害、地震のような揺れ、妊婦・
乳牛の流産、ストレスによる精神的傷害や自殺などがあとをたちません。民家との距離
は400メートルほどしかないのです。1日13時間、長いときには24時間、年間250日
以上の爆撃訓練が行われています。この米軍の訓練は自然と人間の生命の破壊であ
り、悪の限界を喪失するかのような蛮行なのです。
 夏にアメリカの平和運動家が訪れたのですが、憤慨し告発をはじめました。

 梅香里の近くには烏山基地があり、そこから梅香里へと空爆の訓練にくることが多い
のです。コソボやイラクなどで空爆があるときには、練習頻度が高まります。近くに住民
がいることでパイロットの心臓を強くする実戦訓練ができるのです。烏山の滑走路は梅
香里の方向をむいています。梅香里上空で機体にトラブルが起きても烏山基地に着陸
できるのです。

 祖母は生前こんなことをいいました。「日帝統治下と北朝鮮の軍隊による占領がかつ
てあった。しかし、それにより住民の生活基盤は奪われなかった」と。ところが韓国を助
けるといってきた米軍は生活基盤を奪い、人権を蹂躙し、日帝36年より長い50年間も
占領を持続しています。

 このような帝国主義的野望、覇権主義的戦争訓練をおこなう米軍に対し、糾弾せず
にはいられません。アメリカがいうように本当に「自由と平和を愛する」のなら、米軍は
戦争の訓練を中止し、アジア全域から撤収するべきです。アジアの民衆は炎のように
立ち上がり、占領軍としての米軍を追い出す闘争をしていくでしょう。

 6月には撤去闘争を準備しています。これに対し、事前弾圧の一環として、昨日、梅
香里米空軍国際爆撃場閉鎖のための汎国民対策委員会委員長の金鐘一さんがソウ
ル集会で拘束されました。

 私の話を聞いてくださりありがとうございました。皆さんの健康を祈ります。梅香里の
闘いを支援していただければ勇気百倍です。梅香里の基地を撤去し、東アジアから
米軍基地を撤去する活動のはじまりとしたいと思います。梅香里爆撃場反対の私の
アイウエオ作文を最後に紹介します。「梅香里はまだ戦争中/香しい梅の花のかわ
りに/村全体に爆撃の煙があふれ/爆撃する音で米軍への/怒りを覚えた民衆の
連帯闘争で/半世紀にわたる爆撃を中止させ/子々孫々に平安を共にもちたい」

 「行政的には韓国の土地/実質的には米軍の土地/仮想的には北朝鮮の土地」
これが梅香里の現状なのです。
(以上は通訳を介しての発言を要約したものです。)

 討論のなかで全さんは梅香里の闘争を示すパネルを示した。全さんをコーディネー
トする都裕史さんからの解説もおこなわれた。

 プエルトリコのピエケス島では住民の抵抗で米海軍の演習を中止させている。梅
香里では米空軍の演習の一部中止をかちとっている。沖縄では米海兵隊撤退要求
がたかまっている。そんななか日本の岩国での米基地強化がすすみ、沖縄からの
米海兵隊日本内5ヶ所の実弾訓練も強化されている。また日本の自衛隊の海外派
兵力も強化されつつある。

 基地のある現地から、NO!の声をたかめていこう!

       NO!AWACSの会ニュース NO、53 記事
日時… 02年5月19日(日) 60人参加!

場所… 浜松市地域情報センターホール 午後1時30分〜


■映画「梅香里(メヒャンニ)」作品紹介

 朝鮮半島の中央部、ソウルから南西に60キロ。広大な干潟と豊かな海の幸に恵ま
れ、人々が安らかに暮らす漁村があった。春になると海岸線に群生する梅の香りが
村中に満ち、「梅香里(メヒャンニ)」と呼ばれた。
 1951年、米軍によって、この村は米空軍射爆場とされた。
 村の人々は農業や漁業などの生活手段を奪われ、加えて度重なる米軍機による誤
射、誤爆、不発弾の爆発事故、爆音被害に苦しめられる長い年月が始まり、現在もな
お爆撃訓練が続いている。
 このドキュメンタリー映画「梅香里(メヒャンニ)」は、生活権、生存権をかけて闘いを
続けてきた漁師、全 晩奎(チョン マンギュ)さんら梅香里の住民を中心に、米軍犯罪に
よる被害者の支援活動に立ち上がった鄭 柚鎮(チョン ユジン)さんら、米軍犯罪根絶
運動本部の女性たちの活動を記録している。
 「ゆんたんざ沖縄」「しがらきから吹いてくる風」などで知られる西山正啓監督が「水か
らの速達」以来8年ぶりに放つ最新長編作。
 梅香里、沖縄、湯布院、日出生台の人々の交流と信頼関係から生まれた日本と韓国
の“地域合作映画”である。

■上映アンケートから
 梅香里に住んでいる人々の想いが伝わってくる映画でした。軍隊の視点ではなく、米
軍基地前での暮らしへと追い込まれていった人々の視点をもち、そこから生の尊厳の
回復に向けて考えていくことの大切さを語る映像でした。わたし自身のなかにある人間
性の疎外を克服しながら、「命こそ宝」、「結」という理念に立って反戦平和の行動をす
すめていきたく思いました。

 「命どう宝」、わたしも好きな言葉です。「多くの人々がこれに気付くこと、21世紀を軍
事力の安全保障の時代ではなく、人間の安全保障の時代へ。」全く同感です。美しい
梅香里がひどい姿になって。土地や自然や生命を傷つけてアメリカ軍は何も感じない
のか。腹が立ちましたが、これは梅香里だけのことではなく沖縄をはじめ日本国内の
基地のあるところも同じ痛みを持っているのですね。いろいろ考えさせられました。

 印象に残ったのは、あの顔です(全さん)。だってずっと出ていたんだもの。梅香里の
おばちやんたちのパワーはすごい迫力だった。「お前たちはなにを食べて生きてるん
だー。親に恥ずかしくないかー」と畑から機動隊を追い払っていた。
 うしろの人のかさを持って「やめろ」というのにばしんとひっぱたいた。全さんのお墓
の場面も印象に残った。