2007年6月10日

日本国首相様 防衛大臣様             NO!AWACSの会 

浜松基地司令様                  人権平和浜松

                  

                             

  情報保全隊による市民運動監視の中止と調査内容の公開などを求める要請書

 

66日、自衛隊の情報保全隊による300を超える市民団体、政治党派、などのイラク反戦運動への情報活動の実態の一端が明らかにされました。

ここには浜松のNO!AWACSの会が要請書を送付しそれをネット上で記したことや防衛庁前でNO!AWACSの会の要請書が手渡されたことなども記載されていました。請願権は憲法が保障する権利であり、その権利を守るために請願法では請願は誠実に受け取り、不利益な取り扱いをすることがないようにと規定されています。しかし今回の情報保全隊の調査と記載は、政府機関が特定の政治的意思で請願行為を差別選別するものであり、請願の権利の自由を著しく侵すものです。

ここにこのような権利侵害に対して強く抗議し、このような記載の経緯を文書で示すこと、全資料を公開すること、請願権侵害行為を謝罪すること、市民運動への監視を中止することなどを求めます。

また、NO!AWACSの会は浜松地域各地に会員をもつ平和を求める市民の自主的な会です。保全隊の資料にはNLと記載・分類されていますが、政治政派ではありません。自衛隊によるこのような分類はNO!AWACSの会に参加する会員すべての名誉を侵すものです。この分類行為に対する謝罪も求めます。

政府の軍事組織が市民のさまざまな活動をSPNLCVなどと選別する行為をおこなうことは、特定の政治的判断によって思想信条で市民を差別することであり、人権を侵すものであり、おこなってはならないことです。このようなことの再発防止にむけ、自衛隊においては、市民の人権擁護に関する啓発・研修をおこなうべきです。浜松基地でも近年、女性自衛官へのセクハラ、いじめによる自殺事件などが起きています。このような事件の再発防止にもなるでしょう。

さて、情報保全隊は20033月に調査隊が改編されて設立されました。ちょうどイラク戦争が始まったころです。浜松基地でも部隊看板に情報保全隊の名がでました。この情報保全隊ではこれまでの調査に加えて「保全」が任務となり、「外部からの働きかけ等から部隊を保全」するための「資料情報収集」をおこなうようになりました。ここで重要なのは「発生するおそれのある場合」にも情報活動をおこなうとしていることです。

かつて天皇主権の時代には治安維持法の目的遂行罪や予防拘禁制があり、「おそれがある」という理由で処罰されました。今回はイラク派兵反対運動が情報保全を犯す「おそれがある」とされ、それにより調査権が濫用されました。あらゆるイラク派兵反対運動が「反自衛隊」と規定され、網羅的に収集されました。

しかし、それらの調査は、政府による憲法違反の派兵を支える論理によるものであり、自衛隊自らが、市民の結社の自由、表現の自由、プライバシーを侵害し、法的根拠もない無法な、かつての特高警察並みのスパイ活動をおこなうことになったのです。請願行為のみならず、基地への電話やはがき、自治体の決議、部隊への記者の質問、政治家の発言、労働組合の行動、チラシまきなど市民の行動、諸政治グループの活動など、ありとあらゆるものが敵対対象とされ監視され調査されたのです。これは政府・自衛隊による市民の自由権の侵害にほかなりません。

ある項目では反対集会人員を記してそのなかでの政治政派構成員の人数までも記載しています。このような具体的な記載は警察・公安からの資料提供がなければ記せないものです。それは警察・公安が自衛隊内に情報を提供しているということになり、この責任も問われます。

現代のグローバル戦争の特徴は、宇宙支配、予防先制攻撃、情報戦・諜報戦などにありますが、情報保全隊の活動はこの情報戦・諜報戦にほかなりません。それは対外戦争をすすめる中で自国の市民になかに敵を想定する行為であり、現憲法の人権・平和の条項に反するものです。まさに、憲法に反して自衛隊をイラクに派兵する政府の行為が、自衛隊の諜報部隊をして市民運動を監視し、それらの活動の思想信条を調査するという人権侵害の行動へと追い込んだのです。イラク派兵を進めた政府の責任は重大です。

大臣は「反対運動から隊員や家族を守るため」と弁解しましたが、憲法第9条の存在と派兵反対の声が、派兵地域を限定し隊員を直接的な戦闘から守っているのです。この憲法を改悪し隊員を戦場に送り込もうと画策し、隊員の生命の安全を犯そうとしているのは政府自身ではないですか。大臣は発言を撤回し、全関係団体に謝罪し、再発防止に努め、イラクからの撤兵を進め、今後は一切の海外派兵を中止すべきです。

イラク戦争にともなう自衛隊の海外派兵がねらわれるなかで、2003年秋の空自総合訓練では、浜松基地に反戦団体が潜入することを想定して銃を持っての治安訓練がおこなわれました。このような教育を受けている自衛隊員にとって反戦・平和団体は「敵」になります。このような意識を隊員に刷り込んできた自衛隊の責任は厳しく問われなければなりません。

200610月末には、浜松基地前でイラク派兵中止などの要請書を手渡す際、基地側警備隊が要請団を取り囲む過剰な警備をおこない、請願権を侵害する威圧を加えました。警衛隊は要請団が集まったバス停近くで情報を収集し、基地正門前での要請を始めようとすると、戦闘服や迷彩服を含む警衛隊10人ほどが「安全確保」を名目に、基地正門から外に出て要請団に密着してきたのです。それが威嚇的過剰警備であり、請願権の侵害であると抗議すると、担当官は警衛隊を基地内へと戻しました。この事件から自衛隊が市民団体を敵視する傾向を強めていることを感じました。 

私たちは、浜松を再び戦争の拠点としてはならないと考え、自衛隊のイラク派兵に反対してきました。今も同様であり、イラクからの撤兵を求めます。自衛隊員には派兵に反対する市民の声を聞く権利もあると考えます。

今回の事件は、政府・自衛隊による人権侵害です。この事件について、NO!AWACSの会の行動についての記載の経緯を文書で示すこと、情報保全隊調査の全資料を公開すること、請願権侵害行為を謝罪すること、市民運動への監視を中止すること、分類による名誉侵害について謝罪すること、自衛隊内での人権啓発教育の実施、などを求めます。