3月22日(日)14時
イラク戦争6周年 反戦デー  ザザシティパレットC
講演「防衛利権とAWACS」
 講師 田中みのる(ジャーナリスト)   主催人権平和浜松

2009.3.22イラク戦争6年「防衛利権とAWACS」

イラク戦争から6年にあたる2009年3月22日に、浜松で学習会と平和アピールをおこなった。学習会はジャーナリストの田中稔さんを講師に招き「防衛利権とAWACS」の題で話し合った。平和アピールも雨の中、遠鉄浜松駅前でチラシを配った。

以下は田中稔さんの講演の要約(文責人権平和・浜松)。

      

「防衛利権とAWACS」講演 

浜松のみなさん、こんにちは、田中稔です。今日は防衛商社山田洋行問題で垣間見えた防衛利権の闇についてお話します。

山田洋行事件

山田洋行をめぐる贈収賄事件が明らかになったきっかけは、山田洋行と日本ミライズによる内紛によります。もともと、オーナーの山田正志が率いる山田グループは不動産を中心に経営していましたが、山田洋行を1969年に設立して防衛利権にも手を伸ばしてきました。山田一族は旧住友銀行(三井住友銀行)の西川善文融資3部長と深い関係にあり、住友の不良債権を山田グループに持ち込みました。山田洋行の経営を圧迫する形で不良債権を処理しようとしたのですが、このような処理に異議を唱えたのが山田洋行の宮崎元伸専務でした。この対立の中で宮崎専務らは山田洋行と訣別し、日本ミライズを設立したわけです。

山田洋行の側には久間章生前防衛大臣と秋山直紀(社)日米平和・文化交流協会専務理事、日本ミライズの側には守屋武昌防衛事務次官がいたわけですが、この対立により、互いに政界へのスキャンダルを暴露しあう情報戦がおこなわれたのです。その中で、防衛省の「守屋天皇とチルドレン」の実態を明らかにされ、汚職の構造の一部があぶりだされました。山田洋行関係ではCX(次期輸送機)エンジンをめぐる汚職が明らかになりました。また、遺棄毒ガス処理での山田洋行の裏金100万ドルも明らかになってきました。

しかし、この時期の最大の利権はミサイル防衛をめぐるものであり、その中心には三菱重工がありますが、この利権構造までは明らかにされていません。

日本戦略研究センターから安全保障議員協議会へ

つぎに防衛利権の司令塔についてみてみましょう。防衛利権の人脈をみると、その源流には19804月に設立された日本戦略研究センターがあります。その会長は金丸信、常務理事には元陸幕長で後に参議院議員となった永野茂門、幹事には麻生太郎、顧問には伊藤忠の瀬島龍三の名があります。東京佐川急便汚職で金丸信が失脚したのちにこの会長になったのが小沢一郎です。理事長には永野茂門がなり、元統幕議長らも組織しています。この日本戦略研究センターが防衛関係装備の調達に力を持ったわけです。

防衛利権は金丸・小沢ラインを中心に形成されてきました。AWACS(早期警戒管制機)を導入するに際して水面下で根回しをしたのもこの戦略研です。金丸・小沢の訪米で価格が決められ、調達では日本政府がボーイング767を伊藤忠経由で購入し、次にFMS(政府対外輸出)で米政府による機体をAWACSに改修する、という2段階の方式でおこなわれましたが、当初の予算1機350億円であったものが5百数十億円に膨れ上がり、4機で約1000億円も高くなっていました。その際に動いた裏金が小沢の新党結成の資金になったと報じた一部メディアもありました。いわゆるAWACS疑惑です。

このセンターは細川政権の成立とともに休業状況になりますが、瀬島龍三たちは1999年に日本戦略研究フォーラムを設立します。この組織は軍需関連企業関係者や制服組を組織したものですが装備調達の司令塔にはならず、学際的なものでした。

日本戦略研究センター後の防衛利権の司令塔として、2002年ころから力を持ってきた組織が安全保障議員協議会です。この議員協議会の2007年時の会長は元防衛庁長官の瓦力であり、久間や額賀福志郎が副会長でした。この組織は民主党の前原らを含む超党派の防衛族議員を中心に組織され、会員には三菱重工や川崎重工、NEC、IHI(旧石川島播磨)、山田洋行などの軍需産業の面々がいます。

この協議会の事務局長として動いてきた者が秋山直紀です。このころの訪米団の行動記録を見るとシュナイダー、ナイ、アーミテージらと会談したり、レイセオンやロッキードマーチンなどから接待を受けています。協議会のメンバーはゴルフコンペや料亭などで関係を深めていきます。それは軍需サロンであり、政官財の癒着を示すものです。

秋山直紀と日米平和・文化交流協会

この協議会を支えてきた組織が外務省主管の社団法人日米平和・文化交流協会です。この組織の理事の内、常勤は秋山だけでした。さらにこの日米平和・文化交流協会を支援してきた組織がアドバックインターナショナルという会社であり、秋山はこの顧問でもあるわけです。そして、安全保障議員協議会、日米平和・文化交流協会、アドバックインターナショナル日本支社の3組織が、ともにパレロワイヤル永田町の1室に以前、同居していました。このアドバックインターナショナルは活動資金をアメリカのCNS、JACSといったダミー団体から得ていました。これらの会社に金を送っていたのは神戸製鋼や日立、山田洋行、Mグループ、R社、N社などの日米の軍需企業であるわけです。安全保障協議会へとさまざまな団体を経由して、マネーロンダリングによって資金が入り込む仕組みができていたわけです。

いわば真っ黒な金が真っ白な金に洗浄され、すり替えられていたわけです。実際は闇資金なのです。このような資金で動いてきた協議会が、MDの導入や武器輸出3原則の緩和をすすめてきたのです。最近ではアメリカの国防総省が発注するグアム移転事業の利権化も狙っています。

秋山は山田洋行の側にいて、久間とともにCXエンジンの受注にむけ、シュナイダー国防長官顧問やコーエン元米国防長官を通じてGEやノースロップグラマンへと働きかけて商権獲得をねらっていました。この動きに対抗して日本ミライズと守屋は商権の移転を目指していたわけですが、この対立によって秋山の存在が表に出てくることになったわけです。秋山は詐欺まがいの民事事件を繰返してきた人物ですが、このような人物がフィクサーを担ってきたのです。「日米同盟」という仮面をはがすと、私欲に満ちた無数の「ミニ秋山」や「ミニ守屋」がウヨウヨと蠢いているといっても過言ではありません。

●病理構造としての天下りと水増し請求

防衛装備調達においては天下りと水増し請求が病理構造の柱です。受注金額と天下り者数の多寡とが一致します。大臣承認を受けての三菱重工への20007月から200612月までの天下り者数は38人、2000年度から2006年度までの調達金額は2215600万円です。三菱電機や川崎重工、IHI,日本電気なども同様に、多くの天下りと調達金額を獲得しています。山田洋行による水増し金額は確定分でも43776万円(20082月現在)になっていますが、このような水増しは放置されていたわけです。ここから闇資金、つまり内外での接待工作資金が生まれていたのです。山田洋行事件ではその実態が垣間見えたのです。

2008年の防衛疑獄は日米の闇にまたがる大きな事件でしたが、守屋と付き合ってきたアメリカのGEの幹部に、アメリカの腐敗防止法が適用される動きは今のところありません。

三菱内ではMD追随派と反対派の対抗があり、最近、秋山とつながってきたMD派の三菱重工の西岡喬や三菱商事の相原宏徳の後継者・佐藤達夫は失脚しました。しかし、三菱内の軍需利権は温存されたままです。

 ●市民の力でMD導入の撤回を

2003年はMD導入のためにさまざまな細工がおこなわれました。三菱重工はPAC3のライセンス生産を始めますが、そのためには武器輸出3原則の緩和が求められます。この緩和を200412月には官房長官談話でおこなったのです。小泉政権は本来国民の信を問う形ですすめるべきMDを閣議決定で済ませました。05年の郵政解散で小泉内閣はこの問題をはぐらかしました。日本のMD市場規模は6兆円(米ランド研究所試算)を超えるものとなり、MD軍拡がさらに進めば将来的に20兆円にも膨れ上がるとも言われています。

閣議決定で導入したわけですから、次の内閣の閣議決定で中止することは可能です。

日本は財政破綻・経済恐慌の中で社会保障が崩れています。その中でMDのような軍拡ムダ遣いをして果たしていいのでしょうか。米国とMDの共同研究を進めてきたカナダ政府は財政難を理由にこのMDへの参加を中止しました。日本は一刻も早く財政破綻の現状をオバマ大統領に説明し、MD導入を撤回すべきです。市民の側からの力でMDを中止させ、今度の衆院選挙の争点にもすべきでしょう。

最近、ノンフィクションライターとして超ベテランの野田峯雄さんとともに『「憂国」と「腐敗」日米防衛利権の闇』を出版し、ここに詳しく日米の防衛利権について記しました。ぜひお読みください。