313定住外国人の参政権を考える浜松集会報告

226日に浜松市議会が「永住外国人への参政権付与に反対する意見書」を採択したことに抗議する意味を兼ねて、313日に静岡在住の在日韓国人の金勇さんを講師に外国人参政権を考える浜松集会をもった。

以下は金勇さんの話の要約である。

 こんばんは、静岡市に住んでいる金勇です。きょうは一人の在日韓国人として、外国人参政権について考えることを話したいと思います。

 今日話題となっている地方参政権は在日コリアンの歴史の中で生まれてきたものであり、それは自然な要求であると思います。そしてそれは新たな市民権の獲得であり、国民国家を超えていく社会の始まりであると思います。

 在日の100年の歴史、それは日本の植民地支配のなかでの土地の収奪、日本語の強要、創氏改名、そして強制労働の歴史であり、さらに戦後は定住がすすむなかで、主体的な権利獲得の運動の歴史でもあったわけです。

 日本敗戦は朝鮮の解放であったわけですが、在日は1947年の外国人登録令で「みなし外国人」とされ、日本の独立にともない外国人登録法で管理されるようになりました。このとき国籍の選択権は剥奪されていました。この間、朝鮮戦争と南北分断によって在日組織も民団と総連に分断されました。1965の日韓条約、それに伴う在日韓国人の法的地位協定で永住が認められるようになりました。現在では特別永住となっています。

 さて、1970年代は在日コリアンの権利獲得運動が高まった時代です。それは国籍差別との闘いでした。すでに1965年には国民健康保険が適用されました。日立での就職差別裁判は1974年に勝訴します。就学通知、児童手当、公営住宅入居などの行政による差別の撤廃の運動も川崎や尼崎を中心におこなわれ、静岡でも取り組みました。1975年には崔昌華牧師が参政権についての公開質問状をだしています。1980年代には指紋押捺拒否の闘いが始まり、押捺制度は1992年・1999年と撤廃させます。私も押捺を拒否しました。民族差別と闘う全国連絡会も結成されていきました。在日の軍人軍属への補償要求もおこなわれました。

このなかで、1982年に国公立大学での外国人教員の任用、1991年には国公立小中高での教員任用が実現し、地方自治体の一般事務職にも採用がおこなわれるようになりました。静岡県でも静岡、浜松、焼津、島田、藤枝など各地で一般事務職員としての採用がおこなわれるようになったのです。

このような国籍差別を撤廃させる運動がおこなわれていった背景には、日本での定住化の進行がありました。そのなかで、人権意識が定着し、街づくりへの参加も意識にのぼるようになり、積極的な社会参加の意識が生まれてきたのです。さらに人権の国際化のなかで、日本は国際人権規約や難民条約を批准しました。そのなかで国内法の整備や立法による法的な保障が課題となるわけです。1984年には国籍法が改正され、父系から父母両系主義となり、1985年以降に生まれたものは22歳までは2重国籍が認められるようになりました。

そして1990年には大阪で地方参政権を求めて在日が裁判を起こし、その最高裁判決が1995年に出たわけです。敗訴ですが、外国人の地方参政権についての立法は憲法に違反しないという内容をもつものでした。国民でなくとも居住者として権利があるという認識は当然のことです。この判決を受けて、各党の外国人地方参政権に関する法案が提示されるようになり、1500を超える自治体が外国人地方参政権を認める内容の意見書を挙げていくという状況が生まれました。

また、グローバル化の中で1990年代には新たな移民労働者が日本に多数来るようになりました。日本も移民国家へと変容していくわけです。

外国人登録法は廃止され、2009年から3年以内に特別永住者は住民基本台帳に登録されるようになります。外国人登録証は発行されますが、常時携帯義務はなくなります。永住が権利として認められたわけです。現在特別永住者は約42万人、一般永住者は49万人です。

外国人と自国民という二項対立の時代は終わろうとしています。移民してきた人々の権利を認め、共生することが求められています。多民族多文化共生は世界の潮流です。

外国人の地方参政権の要求はこのような国際的な流れの中で生まれてきたわけです。
                                   (以上要約)

 集会では以上の問題提起をうけて、浜松市の反対意見書の問題点を討議し、「永住外国人への参政権付与に反対する意見書」の撤回を求める要請書の提出を確認した。

 

浜松市市長様 浜松市議会議長様             2010315日                        

浜松市市議会議員様                  

 浜松市議会採択の「永住外国人への参政権付与に反対する意見書」
                        の撤回を求める要請書

 

2010226日、浜松市市議会は「永住外国人への参政権付与に反対する意見書」を採択しました。しかし、この意見書はこれまで浜松市がすすめてきた外国籍住民の人権を尊重し多文化共生をすすめるという政策に反するものです。また、その意見書の内容には大きな誤りがあります。よって、ここにその撤回を要請します。

浜松市の外国籍の居住者は2万人をこえ、人口の3パーセント近くを占めるようになりました。グローバル化の中で、浜松市では外国人市民会議や外国人学習支援センターなどの活動もおこなわれ、多文化共生をテーマに先進的な面での活動も数多く見られます。

グローバル化の中での国際的な人権保障と人種差別撤廃にむけての啓発は、多文化共生の核心となるべきものです。そのなかで定住外国人の地方参政権保障は、その地域の人権保障の到達度を示すものです。定住外国人の地方参政権は世界各地で保障されるようになっています。多文化共生をすすめるならば、その政治的権利の実現にむけて地方自治体は行動すべきものです。

かつて、参政権は財産・納税額や性別で差別されてきました。しかし、民主主義の発展はそのような差別を撤廃してきました。今問われているのは、国籍による差別の撤廃です。定住外国人の地方参政権問題もそのひとつです。政治的権利が認められることで、定住外国人の意見が地方自治に反映され、住民統合につながるという理解も必要です。

浜松市議会の意見書は、1995年の永住外国人への地方参政権を求めた最高裁判決を持ち出し、選挙権を持つ住民とは日本国民であり、国民ではない永住外国人の地方参政権を否定しているという立場で採択されています。これが反対論の柱です。

しかし、この最高裁判決では、地方自治の重要性の観点から一定の要件を満たす外国人に対して選挙権を与えることは憲法上禁止されないとしています。つまり、立法は可能であるということです。浜松市議会の意見書の採択の根拠は間違っています。このような間違った認識で採択された意見書は、人権確立を求め、多文化共生をすすめてきた行政や地域住民の利益に反するものです。

また、意見書ではG8(ロシアを除く)では永住外国人に地方参政権がないとしていますが、これは間違いです。ヨーロッパでは定住外国人の地方参政権を認める国が数多くあり、韓国でも2005年に認めています。すでに外国人の参政権は40カ国ほどで認められています。特にヨーロッパ諸国での旧植民地出身者や移民に対しての権利の実現の状況を研究することが、浜松市にとって必要です。国籍による差別撤廃の時代潮流を市議会は理解すべきであり、反対ではなく、実現に向けての意見書を採択すべきです。

意見書では、出身国が永住外国人を政治的に利用する可能性がある、地方分権がすすめば地方での意思決定が国政に影響を与える場合も起こりえる等の文言を、反対するための理由として付け加えていますが、それらは、外国人への恐怖と排外を煽り、地方自治をおとしめる言辞であり、公的な意見書に記すべきではありません。そのような言葉を公然と市議会が使うような軽率さが、人種差別を公然と行使し、自治を軽視するという行為を許しているのです。外国人への恐怖を煽りかねない表現に対し、市議会は留意すべきです。

さらに、意見書では「国家は政治的な運命共同体」であり、自治体はその構成要素であるから日本国民のみが選挙権を持つべきという記述もあります。これは国家主義の発想であり、社会契約や住民自治の視点をもちえない頑迷な論理であり、このような表現を含んで意見書が採択されたことは、浜松市議会の歴史的汚点です。十分な議論があればこのような表現は入り込まないものです。

以上の見地から浜松市議会採択の「永住外国人への参政権付与に反対する意見書」の撤回を求めます。

2010.3.13           定住外国人の地方参政権を考える浜松集会