2010・11・13在日韓人歴史資料館開設5周年東京シンポ

「韓国強制併合100年 韓日歴史認識の違い」

 11月13日、東京で在日韓人歴史資料館開設5周年を記念してのシンポジウム「韓国強制併合100年 韓日歴史認識の違い」がもたれた。シンポでは映画「在日」のダイジェスト版の上映ののち、李成市「古代日韓関係史にみる植民地史観とその克服」、姜徳相「司馬遼太郎史観批判―坂の下はどしゃぶりだった」、李泰鎮「韓国併合条約の実像」、宮田節子「植民地化朝鮮における徴兵制度」などの報告がなされた。

 シンポの報告を聞きながら、「坂の下はどしゃぶりだった」という報告の題にあるように、「坂の上の雲」というイメージの下で見えなくされている坂の下の状況、植民地や占領地での民衆の状態について調べること大切さを感じた。

姜徳相さんは植民地支配の本質が暴力・差別・搾取であるとし、植民地化の過程での詐欺と暴力の事例をあげ、それがジェノサイドの連続であることを示した。そこにあげられている資料には、たとえば甲午農民戦争での農民軍へのジェノサイド、韓国占領戦争での義兵弾圧、占領後の笞刑などの刑罰、三・一独立運動や間島などでの独立運動での虐殺、関東大震災などがあるが、それらの各地域での実態については知られていないことが多い。歴史研究においてその実態を明らかにすることが課題である。

李泰鎮さんも保護条約や併合強制条約がどのように仕組まれて強制されていったのかを、純宗の署名の偽造を含めて示した。李さんは併合条約の批准を純宗が拒絶し、そのため偽の勅諭文が作られた経過を示し、日本側の無法を明らかにした。これらの条約も軍事占領下での詐欺と暴力によるものだったわけである。

韓国強制併合100年、これまで当然のように語られてきた「韓国併合」「ハーグ密使」といった用語も見直されようとしている。東アジアの共同に向け、適切な表記をおこなうべきであろう。好戦的な言辞が目立つ今日、「坂の下はどしゃぶりだった」という視点は大切なものである。                                  (T)