6.4自衛官人権裁判に勝利を!全国交流集会

2011年6月4日、「自衛官人権裁判に勝利を!全国交流集会」が浜松市内でもたれ、150人が参加した。浜松基地人権裁判の判決日が7月11日にあり、今回の集会は全国交流とこの裁判の勝利に向けて開催された。

 集会の第1部では、海自佐世保(さわぎり)、海自横須賀(たちかぜ)、陸自真駒内(命の雫裁判)、陸自朝霞(前橋地裁)、空自浜松など各地の裁判の報告がなされた。第2部では「自衛官の人権を守ることの意義とその方策」をテーマに問題提起がなされ、意見交換がおこなわれた。最後に原告からのアピールがなされ、人権裁判の勝利に向けて団結のコールがおこなわれた。

自衛隊内は軍事的階級組織であり、そこでの抑圧は新たな海外派兵の時代を迎えるなかでいっそう強まるようになり、1年間で100人近く、2001年からの10年間で870人を超える自殺者を生むようになった。そのなかには隊内での人権侵害によるものも数多いとみられるが、隊内ではその真相が隠蔽され、本人へと責任が転嫁されていく。その中で、遺族が真相を明らかにして無念を晴らしたいと、裁判に訴えるケースが増加した。自衛官人権裁判が新たな人権の闘いとして顕在化してきたわけである。

海上自衛隊では海外派兵の回数が増加するなかでストレスも増え、密室化した艦内での人権侵害も増加した。浜松の空自の例ではイラク派兵からの帰国後に人権侵害が強まった。真駒内では対テロ戦争用の徒手格闘訓練によって隊員が死を強いられた。

徒手格闘訓練は相手を素手で格闘し致命傷を与えるというものである。このような訓練が強化されていることは、訓練中にさらに多くの死者を生むことにつながり、自衛隊員が海外に派兵されて実戦に投入される可能性も高まっているということである。

第2部の問題提起では、日弁連人権委員会・基地問題調査研究特別部会の佐藤弁護士が、自衛隊内での懲戒処分において弁護士依頼権が存在しないという形で運用されていたことの問題点をあげ、自衛官の人権確立に向けての課題をあげた。佐藤さんのあげた課題は、市民運動でのホットラインなどの自衛隊員の駆け込み寺の設置、自衛隊内での人権カリキュラムの設定、軍事オンブズマンの設立、裁判での隊内の人権侵害のメカニズムの解明などである。

『兵士を守る』でドイツの軍事オンブズマンと兵士の労働組合について記した記者の三浦さんは、ドイツの兵士のストレスコントロールを事例にドイツでの自殺率の低さを指摘した。ドイツでは、市民による監視と兵士の団結権が認められ、不当な命令は拒否するものと教育されている。

自衛隊も命令よりも良心が優先されるというドイツ軍隊に学ぶべきだろう。それは21世紀において支配的な視点とされるべきものである。

グローバリゼーションによる新たな戦争と軍事の革命がすすみ、殺戮はいっそう強化され、人間性の疎外がすすんでいる。しかし、このような動向は新たなグローバルな平和の運動を呼び起こすものである。人権と平和の運動のグローバルな展開により、市民の側から軍事的組織を監視し、兵士自身の表現の自由と団結の権利の行使を認めるという動きはいっそう強まっていくだろう。そのような動きは戦争自体を止めることにつながるものである。

集会に参加し、個々の裁判に勝利すること、21世紀には人間を殺傷するための組織を、人間を救援するための組織へと転換させていくこと、自衛官の人間としての尊厳をふまえ、良心の自由、表現の自由、団結の権利を認めていくことの意義などについて考えた。(T)