2013、春、沖縄の旅

 春の沖縄は天気が悪い。滞在した一週間の間ほとんど曇りであったが、傘のお世話になったのは2回だけだった。前半は観光旅行で、久しぶりに行った本部半島の「備瀬のフクギ並木」が印象に残った。

 さて、辺野古は春ということで、表面上は大変のどかであった。テントを訪れる人も多く、まだまだ関心を持っている人が日本には多くいることに、少し安心した。しかし、米軍のヘリコプターが沖縄国際大学に落ちた2004年頃と比較すると、テントを訪れる人は変わらないが、座り込みに参加する人は非常に少なくなっていて、寂しく感じる。あの当時とは、運動の方法が変わっているし、いざとなれば、高江や普天間基地のゲート前のように、多くの人が駆けつけて来るのではあるが。

そのような状況の中でも、ねばり強く座り込みを続けている人たちに敬意を表したい。実に3272日である。テント村、村長の安次富氏は孤軍奮闘という感じで、日本全国を走り回っている。疲れている時もあると思うが、常に笑顔で、私のような本当にたまにしか参加しない者に対しても、親切に接してくれる 。

 4月3日、管義偉官房長官が沖縄を訪れた。管氏は仲井真知事と会談し普天間飛行場について「固定化はあってはならない」とし、辺野古移設に理解を求めた。これに対し、仲井真知事は、これまでの日米合意をめぐり「普天間の移設先以外はすべて賛成だ」と皮肉を込めて述べた。そして、嘉手納以南の米軍基地返還に加えて、日米地位協定を補完する環境条項の検討などを進展させるよう促した。また、振興策では、那覇第2滑走路の工期短縮、鉄軌道整備や金融特区の充実に向けた政府の支援を求めた。

管官房長官は沖縄県のマスコミ各社を訪れ、幹部と意見交換した。沖縄タイムスでの一問一答にはつぎのような箇所がある(抜粋)。

タイムス「知事をはじめ県内首長が反対する中、辺野古というのは地元の頭越しの日米合意ではないのか。」

管「頭越しだと新聞記事になるが、法律に基づいて(名護)漁協の皆さんの合意を頂いている。」

タイムス「基地が集中し過去に墜落事故が頻発している。県民の生命・財産が危険に脅かされている現状も頭に入れてほしい。沖縄の多数の意見を聞いてください。」

管「負担軽減を約束している。」

辺野古移設に賛成しているのは辺野古漁協だけであり、隣接している宜野座、金武、石川の各漁協は反対している。辺野古漁協の古波蔵組合長は漁師の経験はない。なぜ、漁師の経験のない人が組合長なのかも疑問なのだが、その古波蔵氏は「辺野古では漁ができないから移設を進めてほしい」という発言をしている。そして、20億円の補償を要求している。防衛省の提示額は「お礼の気持ちを上乗せして」10億円だそうである。

官房長官には県知事はじめ沖縄の市町村すべての首長が反対している声が聞こえないのだろうか。沖縄県民の八割が反対している声が聞こえないのだろうか。日米政府は嘉手納基地以南の米軍施設返還に合意したが、その内実はお粗末そのもの。牧港補給地区、那覇軍港、キャンプ桑江等すべて返還されても、ほとんどが県内への移設、基地面積も73,8%が73,1%になるだけである。また返還期日にしても、とても適正とはいえない期日が示された上、その最後に「またはその後」と記されている。

琉球新報では「返還延期計画」、沖縄タイムスでは「砂上のプラン」と報道している。さらに、自衛隊浜松基地にあるPAC3を沖縄へ移動させる。これが、彼らの言う「沖縄の負担軽減」の実体なのだ。

沖縄4区選出の西銘恒三郎衆議院議員(自民党、かつての沖縄県知事、西銘順治氏の次男)は3月26日、自民党の国防部会と安全保障調査会の合同会議で「4区の私だけは、2期6年の政治活動の中、辺野古を推進してきた事実がある」、「衆院選では、沖縄県連の会長から『辺野古推進は言ってくれるな』と指摘され、県外を求めるという発言にとどめた」と語った。西銘氏は、翁長政俊県連会長の指摘を受け、本意でない表現をやむを得ず掲げたと経緯を明かにした。昨年の衆院選では「県外移設」を掲げて当選した。今回このような発言をしたのは「うそをつき続けることは不誠実で耐えられない」のだそうだ。自民党県連は、今年7月の参院選では「普天間飛行場の県外移設を掲げて戦いたい」と菅官房長官に伝えている。うそが繰り返されるのである。

今の沖縄の人たちの大きな課題は、防衛省が3月に県に提出した辺野古沿岸部の公有水面埋め立て承認申請書を仲井真知事が承認しないようにはたらきかけることである。そのような中、3月28日、名護市大浦湾の水深19,6メートルの海底でジュゴンのはみ跡が見つかった。専門家は国内で最も深い記録と指摘している。

写真を確認したジュゴンネットワークの事務局次長は「防衛局のアセスでは深場のはみ跡どころか海草藻場すら確認されておらず、基地建設への影響が過小評価されている。県知事は埋め立てを許可するべきではない」と求めた。また、沖縄平和連絡会の真喜志好一氏らは、県庁を訪れ、埋め立て承認願書をインターネット上で公開するよう求めた。

かつて「沖縄から日本がよく見える」とよく言われた時期があった。今回の沖縄訪問では、政治屋の劣化を改めて痛感した。だれが聞いてもすぐに分かってしまうようなウソを「金」と「権力」のために、平気でつく。

このような輩に「誠実」などという言葉は使ってほしくない。しかし、このような輩を選んでいるのも我々である。「騙されたあなたにも責任がある」と京大の小出先生の本のタイトルにある。 (池)