山本英夫写真展「命どう宝。海よ、森よ、暮らしを」
2013年5月、東京・中野のPAOギャラリーで山本英夫の写真展「命どう宝。海よ、森よ、暮らしを」が開催された。
ギャラリーには60枚ほどの写真が、1命どう宝、2海よ、森よ、3非暴力抵抗のなかから,4諦めない、希望を生きるの順に、並べられている。そこは、切り取られた風景の美しさに満足するのではなく、写真を見ながら、沖縄の物語を読み取り、人間の希望のなかにある美しさとは何かを問う場だった。
展示は、名護市豊原から見た海で始まり、与那国島西崎(いりざき)からの海の写真で終わる。人間を育んできた海、人間の国境線を超えていく海。海は深く、軍拡や領土ナショナリストらのざわめきとは無縁だ。そこに立ち、命を起点に、海と森からの声を聞き、今すすめられている軍事への抵抗を確認し、その抵抗を諦めない。亀甲墓をも基地のなかに囲い込んでいく暴力を許さない。
山本は、岩場に咲くオキナワギク、木に舞うオオゴマダラ、緑の葉の下から首を出すアオカナヘビ、地面のモンキアゲハを写真に切り取る。そのような生物たちをとりながら、森と海からのメッセージを伝える。
マングローブ林に潮が満ちるときに、水面にきらりきらりと光るものがある。土のなかのカニの目や魚が夕日を浴びて光っていたのだった。山本はそれを語り、その海と大地を破壊するものと対抗する意思を示す。その抵抗の精神を止めることはできない。君主制を克服できないヤマトの政治の質が刻々と低下し、過去の戦争犯罪を肯定する政治屋が跋扈する。その中で沖縄の独立論も共感を得ている。
時代の転機のなか、ギャラリーには海を殺戮の拠点にするな!という熱い思いとともに、写真が静かに並んでいた。それらの作品群との対話は、競争と憎しみが煽られるなかで、自らの立ち位置を確認しつつ、何が失われ、何を培っていくべきなのかを問うことでもあった。この写真展の開催祝いに浜松の地酒を贈り、平和の歌を二曲弾き語り、会場を後にした。 (竹)