9・21 「グローバル戦争と沖縄・シリア」

 

2013921日、グローバル戦争と沖縄・シリアをテーマに学習会をもった。最初に、過去の戦争を反省できていないことから現在の過去賛美や歴史的無責任な言動があるという問題提起がなされた。

1のテーマでは、沖縄での新基地建設・オスプレイ配備について報告と討論がなされた。報告では、沖縄での1995年以降の、沖縄民衆による1995年の少女暴行事件抗議集会、辺野古での抗議行動、普天間国外県外移設要求集会(2010年)、2012年のオスプレイ配備反対集会、普天間封鎖集会などの歴史が示され、オスプレイ配備に関する論点が提示された。討論では、沖縄での右派の存立基盤、沖縄独立論の現状、オスプレイの侵攻能力・加害性への視点などが出された。

2のテーマでは、シリアの現状と米軍の動きについて報告と討論がなされた。報告では、シリアをめぐる諸国の利害、「内戦」と「民主化」について、反体制派の動向、アメリカによる軍事介入などの問題点が示された。討論では、左派の動向、反戦運動の視点などが話された。

3のテーマでは、戦争と反戦運動について報告がなされた。報告では、帝国主義期の戦争、冷戦下の戦争、現在のグローバル戦争の特徴と反戦運動の課題が示された。そこでは、戦争国家が世紀のウソをつき、民衆を戦争に動員してきた歴史が示され、それに対抗する民数の正義の実現に向けて反戦運動があったことが話された。討論では、反原発の運動の意義、兵士人権論、自衛隊の米軍部隊化、今後の反戦運動などについて話題となった。(T

 

沖縄報告(オスプレイを中心に)               2013、9、21(池谷)

@1995年以降の歴史

     
 1995  9月  米兵3人による少女暴行事件
    10月   県民8万5千人が結集して「少女暴行事件を糾弾し、地位協定見直しを要求する県民総決起大会」
1996  4月  橋本首相、モンデール米駐日大使、普天間基地返還合意を発表。ただし、移設を条件
    12月   SACO(日米特別行動委員会)基地返還・縮小の最終報告。
1997   1月   日本政府、普天間基地の移設先として名護市辺野古を表明。
    12月   名護市市民投票、反対多数。
2004   4月   那覇防衛施設局、新基地建設のボーリング地質調査のため辺野古に入る。
         それを阻止しようと住民・支援者による座り込み始まる。
     5月   1万6千人の人間の鎖で普天間基地を包囲。
     8月   普天間基地所属のヘリ、沖縄国際大学の本館に墜落。
2006  5月     米軍再編ロードマップ発表。新基地でのV字型滑走路建設に日米政府合意。
    11月   知事選で辺野古移設を条件付き容認の仲井眞弘多氏が初当選。
2010   1月  名護市長選で辺野古移設反対の稲嶺進氏が当選。
    4月    普天間の返還と国外・県外移設を求める県民大会。
    11月   仲井眞知事、県外移設要求を公約に掲げ、再選。
2011   5月  鳩山首相、普天間基地県外移設の公約を果たせず、降板。
    6月  米、オスプレイを2012末、沖縄に配備(第1次)することを公表
    12月  沖縄防衛局、普天間飛行場の辺野古への移設に向けた環境アセスメント評価書を県庁に提出しようするも市民に阻止され、仕事納めの28日未明、こっそり守衛室に運び込み、猛抗議を受ける。
2012   9月   オスプレイ配備に反対する県民大会に10万1千人が結集。
        27日〜30日普天間基地を封鎖。
     10月   オスプレイ12機(第1次)沖縄配備完了。
2013    8月  オスプレイ11機(第2次)沖縄配備(1機、岩国基地)
 8/5   米軍所属HH60救難ヘリコプター1機がキャンプ・ハンセン宜野座大川ダム付近に墜落炎上、3人救助、1人死亡。民家から2km.
  8/22   宜野座村民大会。1100人参加。(宜野座人口5800人)
事故の原因究明もなされず、具体的な再発防止策も示されないまま2週間で同機種の飛行開始。大会開始30分前、事故機と同機種ヘリが上空に飛来
 8/26   午後3時半すぎ(日本時間8/27、午前7時半すぎ)米西部ネバダ州インディアン・スプリングスでオスプレイ事故。事故機はカリフォルニア州の海兵隊ミラマー基地所属。クラスAの事故。クラスAとは「政府及び政府所有財産への被害総額が200万ドル以上、国防省所属航空機の損壊、あるいは死亡、または全身不随に至る傷害、もしくは職業に起因する病気等を引き起こした場合」の事故の規模。

Aオスプレイはどんなヘリか

唯一のティルト・ローター機
CH−46Eの約2倍の速さで飛行、3倍近くの積載量、約4倍の戦闘行動範囲を有する。搭乗員3~4人のほか24人の兵員、9000キログラムの積荷を搭載でき、610キロの戦闘範囲を有する。最大速度520キロ/時、給油一回によって1120キロまで飛行でき、最大飛行時間は3~4時間となる。
MV−22は艦船上で容易に収納でき、離着陸可能。
1機約59億円(64万ドル)CH−48Eの10倍
開発に30年以上費やし、4兆5千億円の費用がかかった。

欠点
オートローテイションが機能しない。
編隊を組んだとき、自らの回転翼で生じる気流に次に続く機体が巻き込まれバランスを崩す。2000年のアリゾナ州の墜落事故(19人死亡)の原因とされている。
離着陸時の騒音増大、低周波音は一部地域で基準値を超える。
離着陸時に強い風圧と排気。2010年ニューヨーク市、展示飛行中に回りの木を折り10人がけが。

事故歴

1991年6月 試作機V−22FSD 人為的ミス
1992年7月 試作機V―22FSD 7人死亡 エンジントラブル
2000年4月 初期生産機MV−22B 19人死亡 操縦ミス
2000年12月 初期生産機MV−22B 4人死亡 エンジントラブル
2007年11月 海兵隊機 エンジントラブル 
2010年4月 空軍機 4人死亡 ブラウンアウト
2012年4月 海兵隊機オスプレイMV−22 2人死亡 操縦ミス
2012年6月 空軍機オスプレイCV−22 操縦ミス
2013年8月 海兵隊機オスプレイMV−22 クラスA(被害総額200万ドル以上)

辺野古配備の口実


前機CH−46Eの老朽化(50年以上使用)
日本・アジア太平洋における海兵隊の抑止力強化
日米同盟と日本の安全保障にとって極めて重要(中国、北朝鮮)


オスプレイ配備をめぐる論点 抑止力か

オスプレイはただの輸送機。日本への攻撃や侵略を防ぐ抑止力は既に存在する空軍が担っている。(「米政府監視プロジェクト」ベンジャミン・フリーマン博士)
たった24機の輸送機で抑止力が向上するという主張はバカげている。(米軍事力評論家、カールトン・メイヤー氏)
 沖縄のオスプレイには佐世保の強襲揚陸艦が必要。直接尖閣へ飛んでいくことはない。米国が日中の領土紛争に日本側に立ち軍事介入する可能性はない。米国では軍事費の削減は共和党、民主党共に必要としており、無駄な戦力は陸軍と海兵隊としている。(沖国大教授、佐藤 学氏)
米の戦略はエア・シーバトルへと展開しており空海軍が主力

Bグローバル戦争と沖縄

 中国 A2「アセス拒否」…アメリカがアセスするのを防ぐ。 AD「区域拒否」…一定の区域にアメリカ軍が入 ってくるのを拒否
 米国 エア・シーバトル  
 南シナ海、西太平洋が焦点になっている。
 経済的な囲い込み(TPP、ASEAN等)と合わせた軍事戦略

 日本(沖縄)駐留は米国にとって都合がよい
  日米安保、日米地位協定。米軍がイラクから撤退したのは裁判権をどうするかという合意ができなかった。 日本では…。
 環境(爆音、飛行回数、ヘリは3分に1回、固定翼機は5分に1回)。
 ・飛行禁止区域に普天間第2小学校、日本の航空法が適用されない(静岡空港の立木問題と同じ事が普天間基地では問題にならない)。普天間基地は米軍への提供施設ではあっても航空法上の飛行場ではない。飛行場ではない普天間であらゆる飛行訓練ができる。日本が年間6000億円の駐留経費を受け持つ。

 1995年当時は普天間の代替えはヘリポートでよかった。しかし、2009年までの中国の軍事力強化により、中国有事に対して那覇と嘉手納の滑走路だけでは足りなくなった。(2009年キャンベル次官補)。

辺野古は新基地には不適当とするもの

米国の経費削減。グァム移転予算削除(2010年)。100億ドルと言われていた移転費が160億ドル、170億ドルかかる。海外部隊の削減(ヨーロッパ10万人、アジア10万人)。「中国から遠い地域の駐留ではあっても機動性の高い海兵隊は中国の動向に応じやすく、その一方、オーストラリアは沖縄と違って、中国軍が強化している中距離弾道ミサイルの射程外にあるので安全」(アメリカ議会、米中経済安保調査委員会)。

新基地は辺野古に作るべきとするもの

県内移設の軍事的合理性がないのに固執する官僚機構。
宮崎の新田原飛行場の強化、横田、岩国の米軍基地の整備、日本各地の自衛隊の米軍のための基地整備から考えると、辺野古に新基地を作ることが便利である。V字型滑走路はジェット機がどんどん飛べる飛行場、弾薬庫もあり、弾薬装てん場所も計画されている。軍艦も接岸できるよう計画されている。
普天間飛行場に所属する海兵隊ヘリ部隊を、沖縄所在の他の海兵部隊から切り離し沖縄県から遠く離れた県外に移設すれば、海兵隊の持つ機能(機動性・即応性)を損なう懸念がある。
台湾有事を考え、本格的な前線基地が必要。それは辺野古である。

Cまとめ 

 沖縄の新基地に対して賛否、いろいろな議論はある。今夏、沖縄を訪ねてみて、このような議論が大変空疎に聞こえた。
2012年9月、10万1千人が参加したオスプレイ配備反対県民大会の1か月後にオスプレイは配備される。 2013年1月、沖縄県内の41全市町村首長が東京でアピールするも無視。
 オスプレイの飛行運用規定違反を県が指摘した318件は「合意違反は確認されない」と防衛省は回答。
 8月5日キャンプ・ハンセンのヘリ墜落、宜野座村民大会開始前のヘリの挑発飛行。
 ヘリ墜落から1週間でオスプレイ9機普天間へ配備。
 アメリカでのオスプレイ墜落事故、等々。「県民の声が日本政府に届かない」と、仲井眞知事は何度か口にした。沖縄県民の怒りは頂点に達している。そして、形はどうであれ『沖縄独立』が現実味を帯びてきていると感じる。私がいつも訪ねる書店には「沖縄、自立への道を求めて(高文研)」「沖縄の自立と日本(岩波書店)」等、沖縄自立に関する本が所せましと並んでいた。

  来年1月の名護市長選挙が大変な山場になる。3月には名護市議選挙、11月には知事選挙である。「沖縄県民の会」の設立等の基地推進派の動き、8/23菅官房長官が沖縄に来て仲井眞知事と会談、話は出なかったようであるが当然「辺野古の地固め」である。このような油断のならない政府の動き等を考えると、いつまで「オール沖縄を貫けるのか」緊迫度は増すばかりである。しかし、沖縄の今日があるのも、そしてこれからの沖縄を形作っていくのも、『沖縄の民衆の力』が大きな意味を持つと思う。

参考にした資料

・  「NO BASE」(辺野古テント村発行)

・  「普天間を閉鎖した4日間」宮城康博・屋良朝博  高文研

・  「討論 普天間基地はなくせる」伊波洋一・柳澤協二  かもがわブックレット

・  「オスプレイの謎。その真実」 森本敏 海竜社

・  「世界」、琉球新報 沖縄タイムズ