2015.4 「日本と原発」浜松上映会に参加して

 

2015412日、浜松市科学館で「日本と原発」(河合弘之監督)上映会がもたれ、90人が参加した。浜岡原発を考える静岡ネットワークによる県内上映運動の一環での上映会である。

河合さんは浜岡原発差止訴訟弁護団長であり、脱原発弁護団全国連絡会の代表でもある。今回、原発の問題点を広く、人々に伝えようと映画を制作した。2時間を超える作品である。

 福島原発震災事故では事実が隠蔽され、事故後止まった各地の原発の再稼働がねらわれている。映画はその隠蔽と隠蔽をすすめる原発の利権構造を明らかにし、抵抗する動きを追う。

映像は浪江町の請戸地区から始まる。福島第1原発の近くであり、事故後立ち入りが禁止され、救助を求める車のクラクションやがれきの下からの応答があったにもかかわらず、救助が中止された場所である。フリーのジャーナリストが入り込み、汚染が少ないことがわかり、1か月後に「救助」活動が再開された。救助できたはずの人々が多くなくなった。

吉田所長の知らぬ間に現場に東電の70人を残すだけで、福島第2への撤退がおこなわれ、呼び戻された。その経過が明らかにされる。推進側はその記事を書いた朝日新聞を攻撃し、撤退を誤報として宣伝したが、それが誤報ではないことを示される。東電は現場からの撤退を考えたが、政府は東電に、日本が終わるかもしれない、逃げ切れないのだから、撤退はありえないと説得したことも明らかにされる。

チェルノブイリ事故では情報の隠匿がなされたが、福島も同様だ。

事故前に出された、津波が15メートルの及ぶと指摘する報告書が握りつぶされ、事故後には「想定外」とする言い訳がなされた。地震いより原発が事故を起こしたとすると、全原発の耐震設計が問題となるから、津波が事故の原因と宣伝された。

原発事故により、国土を喪失し、すべてを失った人々が存在することが、隠され、収束と復興が宣伝されている。それはいつわりの宣伝だ。毎日300トン、400トンの汚染水が外に流れつづけている。原子炉から放射性物質も放出されている。核燃料を冷やすのに10万年が必要だ。核廃棄物の処分場は未定だ。原発のコストは事故処理を含めれば、10兆円を越えるものになるのだが、低コストが宣伝されてきた。

日本の原発推進側は「自己完結型永久エネルギー構造」を宣伝した。その再処理システムは、青森の再処理工場の不具合、高速増殖炉もんじゅの事故で、破綻している。そのなかで、原発推進の口実として、プルトニウムを持っての核武装論が公然と語られるようになった。

原子力安全委員会は、規制委員会に名前を変えたが、事故の詳細が判明していないのに、再稼働を許可した。安全基準を規制基準と言い換えてはいるが、規制できていない。再稼働推進委員会である。

原子力の利権、利益共同体がこの再稼働をすすめている。電力会社は市民からの電気量と国からの補助金で潤い、メガバンク、企業、政府、大学とつながりを強め、メディアを使って、安全・安心を宣伝し、労働組合を御用化する。官僚は「天下りの差配」でポストを渡り歩く。御用学者は100ミリシーベルトまでは安全と宣伝する。政治家は、事故は収束した、コントロールされていると、軽々と言い放つ。石油の輸入が増え、それが経済を圧迫していると宣伝し、再稼働の口実にしているが、日本の純資産3000兆円やGDP500兆円、そして将来の安全性からみれば、大した額ではない。

地震多発国で原発を持つ国が日本であり、その巨大地震の中心にあるのが浜岡原発である。中電はその再稼働を計画している。いま浜岡原発は停止しているが、6500本ほどの使用済み核燃料を安全な場所に移動することが、求められている。原発に対する倫理が問われている。ドイツは、どこまでリスクを負えるのかを考え、倫理委員会で廃絶を判断した。自然エネルギーへの転換もすすんでいる。

311事故で、人間の方向性をみつめ直す人々もあらわれた。「国敗れて、山河あり」というが、放射能汚染は山河に入ること許さないのであり、「山河なし」の状態だ。福島事故は放射能汚染によって居住地を消滅させた、歴史上の重大事故である。復興の宣伝ではなく、避難が求められている

事故後、全原発が裁判にかけられた。加害者を問い、不正をただそうと立ち上がる人々が全国各地にいる。10万を越える人々が、故郷を、すべてを失ったのであり、精神を病み、自死した人もいる。その悔しさ、怒りから、あらたな歴史ははじまる。その悔しさ、怒りをわかちあおう。

映像では最後に、各地の原発の姿が写された。原発は、マルやシカクの建造物を安全・安心の色彩で飾り、海辺に並んでいる。それは、メルトダウンで世界を破滅させることができる凶暴な装置である。人間を絶滅させるためにつくられた強制収容所の見張り塔は世界の建築様式からデザインされていたが、原発の姿はそのような絶滅施設を連想させる不気味なものだった。NO!NUKES。                  (T)