敗戦70年、日韓条約50年、過去清算による平和形成を
2015年3月21日、山口県宇部市で、第8回強制動員真相究明全国研究集会「強制連行問題をどう終わらせるか」が、強制動員真相究明ネットワークと長生炭鉱の「水非常」を歴史に刻む会の共催で開催された。
長生炭鉱での水没事故は1942年2月3日に起きた。現時点の調査で、死亡者は183人、そのうち朝鮮人は137人に及ぶ。1982年、跡地に「殉難者之碑」が建てられたが、朝鮮人強制連行の史実や死亡者名は刻まれなかった。殉難碑を作った旧炭鉱関係者は、朝鮮人は当時日本人であり、仲良くし、差別はなかった、謝罪することはない、碑は地区の発展に寄与したことを顕彰するため、全員を慰霊するためのものであり、殉難者の氏名は無くてもよいという立場だった。
それに対し市民団体は、植民地支配と強制連行を謝罪し、名前を記すべきと活動をすすめた。1991年3月、長生炭鉱の「水非常」を歴史に刻む会が結成され、翌年、韓国で長生炭鉱事故被害者の遺族会が結成された。炭鉱跡地では追悼集会が開催されてきたが、2013年に追悼碑がやっと完成したのだった。
その追悼碑には、刻む会による追悼文がある。そこには、再び他民族を踏みつけにするような暴虐な権力の出現を許さないために、力の限り尽くすことを誓い、ここに犠牲者の名を刻みますと、記されている。
このように地域で、過去清算の動きと歴史修正の動きとが対抗し、死者一人ひとりへの追悼の思いと権力への抵抗の意思が刻まれてきたのである。
過去の侵略戦争と植民地支配の清算は、今もできていない。政府は、教科書への検定を強め、政府の見解を書き加えさせ、敵愾心を煽っている。福島原発震災による汚染と離散に対しても、詭弁を重ねて、その責任をとろうとしない。他方で、戦争への参加をねらい、原発を再稼働させ、格差をさらに拡大させようとしている。それにむけ、メディアと教育を操作しようと躍起になっている。だが、現実を批判的にとらえて新しいものを創りだそうとする芽は、取り除けないものだ。
今年は、敗戦70年、日韓条約50年の節目である。戦争責任、植民地責任、原発責任にこだわり、その真相を明らかにし、その清算にむけての行動を、地域から積み重ねていくしかない。暴虐な権力はすでに出現している。戦争、植民地、核は多くのいのちを奪った。そのような、いのちの歴史の側から、過去の清算による平和の形成をすすめていきたい。