20161217 李泳采さん静岡講演「韓国で何が起きているのか」

 

 20161217日、静岡市内で、李泳采さんが「韓国で何が起きているのか」の題で講演した。集会には60人ほどが参加し、そこで李さんはつぎのように語った。

 韓国では、朴政権の弾劾と辞任を求めて100万を超える人々がソウルの中心部に押し寄せるなど、全国各地で行動がおこなわれています。

 問題となっている朴槿恵・崔順実ゲートについてみてみます。朴槿恵は朴正煕の娘ですが、実際には、崔順実に身も心も操作され、崔順実の意思で動いていたのです。崔順実の父の崔テミンは、父母を殺された朴槿恵に近づき、催眠によって朴槿恵を操り、娘の崔順実も朴槿恵を操作したのです。

朴槿恵大統領に関する南北、日韓、軍事などさまざまな情報が大統領・秘書から崔順実へと流され、崔の指示によって政治が動かされていたのです。朴槿恵は安秘書を使い、全経連に圧力をかけて、Kスポーツ財団、MIR財団などをつくらせて、資金を拠出させ、冬季オリンピック事業やコリア文化融合事業などをおこなわせました。この財団は崔順実に私物化されていたとみられ、崔はオリンピック用地を買い占め、利益をあげました。梨花女子大学に娘の鄭ユラを、馬術を利用して不正に入学させ、娘は授業にはほとんど出席せず、教授にレポートを書かせていました。Kスポーツ財団は娘に3億円の馬を与えていました。

 問題が明らかになったのは、JTBC(ケーブルテレビ)の孫ソクヒの決断がおおきいのです。JTBCの記者が、財産を処理して姿を消そうとしていたMIR財団に行き、残されていた机からタブレットを見つけました。そこには朴大統領の原稿の添削や崔順実の自撮写真などがはいっていたのです。1024日、JTBCはこのタブレットの内容の一部、大統領の演説原稿が崔順実によって添削されていることなどを放送したのです。

 報道により、大統領の犯罪、たとえば、国家機密防止法違反、情報漏えい、職権乱用、大統領記録保管法、賄賂授受・強要などが問題となりました。報道を受け、市民による辞任・弾劾の声が強まりました。

この動きに対する朴大統領の談話は、市民の絶望と怒りを誘うものでした。朴槿恵の「私がこのように目に会うために大統領になったのか、自らを恥じる」という言葉はさまざまな人によって揶揄されました。1129日の朴槿恵の「進退を国会にゆだねる」という責任回避の発言は、122日の弾劾採決を引き延ばすことはできました。しかし、123日には230万人が全国各地で抗議の意思を示し、このような市民の怒りの増幅とキャンドルデモの炎によって、129日には韓国国会で与党からの造反が多数出るなか、300人中234人の賛成で、弾劾が可決されたのです。

韓国では、夜のデモは禁止されるため、「文化祭」の名で集まります。それは自発的な非暴力行動による、直接民主主義の表現の場となっています。家族や若者の参加も多く、有名な芸能人も参加しています。

この間、2016413日の総選挙では、若者が戦略的な選択をし、野党に票を入れ、朴政権を過半数割れに追い込みました。与党のセヌリ党は122議席となり、共に民主党が123議席を取ったのです。「1票は銃よりも強い」のです。

韓国は、1987年の民主化運動によって文民政権が生まれたのですが、その後の30年の歴史をふまえ、この87年体制を超えるために、新たな政治革命がすすめられようとしています。5年の大統領の権限は強く、その権限の分散が必要です。30年間の文民政権のなかで、言論・政治・教育・財閥・検察などで、さまざまな問題が生まれました。若者の非正規の増加など、格差社会は深刻です。

今後は、今回の弾劾可決をうけ、憲法裁判所がいつ、どのような判断をするのか、与党は分裂するのか、野党はどう連帯するのか、次の大統領はだれになるのか、憲法をどう変えるのか、市民主権にむけての政治革命をどう実現するのかなど、多くの課題があります。

(文責・人権平和・浜松)