プラタナスの樹の下で  べにはこべ

 

 

空襲を生き延び

七〇年の歳月を経た今、

むくどりたちの

夜の宿り樹となることも許されず

季節はずれの枝打ちをされ

足元にアスファルトを張られたプラタナス

みるみる樹皮は

厚くめくれ上がり

カランカランと

悲鳴にも似たかけらを落とす

それでも懸命に葉を繁らせ

心許ない影が私たちを覆う

 

あの日から

『NO! 戦争法』のバナーやプラカードと

毎日立ち続けて、また秋の訪れ

穏やかで緩やかな繋がりの中で

おしゃべりやスタンディングカフェを楽しみ

時にはアピール

そして歌も歌います

でも 

私が一番聴いてほしいのは

あなた自身の声なのです

 

アコーディオンに合わせて

元気に歌う子供たち

自分で押したキーの音に

びっくりしてはにかみ

小走りにあなたの手をまさぐる笑顔

そして

あなたの両腕に眠る

ここちよい重みに微笑む時

胸の奥底からわき上がる

あなた自身の想いに

耳を澄ませてほしいのです

 

ようやくアスファルトをはがされ

土を置かれたプラタナスの

春の芽吹を祈ります

 

(駅前スタンディング400日の日に)