季節の移ろい        高橋 恵理

 

 

大きな蜻蛉(とんぼ)の死骸を見つけた

駐車場の隅でひっそりと短い生を終えたのであろう

とたんに蜻蛉の漢字が頭に浮かんだ

とんぼではなく蜻蛉 夏の終わりを想う

 

そういえば自然の光景の中で

季節の移ろいを感じることが減ったように思う

減ったように思うのは感性が鈍くなっているのか

自然が移ろう姿を見せてくれなくなっているのか

恐らく答えはどちらにもあるのだろう

 

季節を象徴する花々も今や人工的に栽培され

一斉に咲き乱れる花畑を人びとは歓声をあげて写真に収める

写真画像はネット上を賑わせイイね!を求める

様々な美しい自然をバーチャルな形で見た気になっている

 

あるとき空き家になった両親の家を久しぶりに訪れた

手入れされてない庭は名も知らぬ草たちに覆われている

素手で伸びきった草をやたらと引っこ抜いていく

ふと青いものが目に入った リンドウだ

 

リンドウが一輪草に埋もれるように咲いている

どうしてこんなところに一輪だけあるんだろう

そうだ!リンドウは母の好きな花だったけ

主がいなくなって花は自分の力で咲いて見せたのか

 

まだ暑さの残る荒れた庭に恥ずかし気な秋を感じた

 

追うか逃げるか     高橋 恵理          

 

 

息苦しくて目が覚めた

どうやら夢を見ていたようだ

何だか得体のしれないものに

仲間と共に追いかけられていたようだ

 

とてつもなく大きな岩のようなものだったか

手にナイフを持った妖怪のようなものだったか

走っても走っても追いかけてくる

走るのが苦手なはずが必死で逃げた

 

一体正体は何なのか

何に追いかけられていたのか

何やら大きくて不気味なものだ

始めは私たちが追いかけていたはずだ

 

それがいつの間にか

こちらに襲いかかり事態が逆転する

今思い出したのだが

私たちが追いかけていたものは                        

 

正義を壊す絶大なる力

 

この力と闘おうと私たちは

集った

語り合った

学び合った

 

それがどうだ!

 

この絶大なる権力は私たちを

追い散らし

ばらばらにし

さらに追いかけて来た

 

追われる身はもうイヤだ

態勢を整えまた追うことにしよう

足腰を鍛えて

立ち向かっていくまでだ