浜松市の水道民営化(コンセッション)の
                   中止を求める要請書



 2018年9月28日、浜松市上下水道部に以下の要請書を出した。要請には6人が参加。要請では、コンセッションが民営化のひとつの形であることを指摘した。水道部は下水道での契約のうち、市民の反対や訴訟の費用を市側が負担する条項は市から提示したものとした。それに対し、そのような提示案が練られたこと自体が問題と追及した。なお、水道部は管理者との対話の場を設定する意思を示した。これに対しては、再度、日時の調整をすることにした。



浜松市長様                        2018年9月28日

浜松市上下水道事業管理者様      人権平和・浜松

                       水道民営化(コンセッション)反対市民有志

 

   浜松市の水道民営化(コンセッション)の中止を求める要請書

 

 浜松市は水道の民営化(コンセッション)をすすめている。わたしたちはこの動きに強く抗議し、その中止を求める。2018年に入り、浜松市は市のウェブサイトにこの問題についてのQ&Aをアップしたが、それは、コンセッションを擁護し、導入を前提とした記述であり、多くの問題がある。以下、市のQ&Aを中心に問題点をあげる。

1 コンセッション=「運営委託方式」は本質のごまかしであり、改めよ

 市は運営権対価を事業の売却対価とみることを「誤解」とみなし、「市は事業そのものの売却収入ではないと考えています」と記す。しかし、水道資産を所有しつつ、その経営権を長期にわたり民間事業者に与え、その対価をえることは、経営権の長期の売却にほかならない。市の「運営委託方式」の宣伝は、コンセッションの長期経営権売却という民営化の本質をごまかすものである。

2 コンセッションが民営化の一形態であることを認めよ

 市は「完全民営化ではありません」と記し、コンセッションを業務委託と完全民営化の中間形態と表示する。これは不正確である。長期の経営権売却とその対価を得るしくみは民営化の一形態である。市はコンセッションが民営化の一形態であることを認めるべきである。

3 コンセッションありきの姿勢をあらためよ

 市は上下水道のコンセッション導入に向けて業務をすすめてきた。下水道については2018年からヴェオリアなどの企業集団が出資する会社による経営がはじまった。Q&Aの記載は、コンセッション方式を擁護する視点で書かれている。市民の反対意見を「誤解」とするが、それは不当である。コンセッション導入の可否を判断すると語りつつも、導入を前提とする記述になっている。そのような姿勢をあらためよ。

4 市の民間活力導入方針を見直せ

 2017年4月、市は「浜松市民間活力導入に関する基本方針」を出した。これは政府が「PPP・PFI優先的検討規定」の策定を要請したからであるが、PPP・PFI優先の規定は、外部コンサルタントを起用し、導入しない場合をネット上で公表するというものである。これは官民連携の名で、公的資本を民間投資やビジネス拡大の対象とするものであり、問題がある。市はPPP・PFI優先、水道の民営化など安倍政権の経済政策に追随する姿勢を改めるべきである。

5 世界での再公営化の動きを認知せよ

 市は市民による再公営化の動きの指摘について、逆に民営の維持数や民営化の事例数をあげ、市がやるコンセッションには問題がないとしている。しかし、民営化による経営の不透明、値上げ、投資不足などの問題が顕在化し、再公営化がすすんできたことは歴史の事実である。パリ、ベルリンなど200件を超える再公営化の事例をみるならば、浜松での水の民営化は再考すべきである。

6 浜松の水道事業が優良であり、それが狙われていることを見抜け

コンセッションを導入しようとする側は、日本の上下水道の資産規模が90兆円を超え、上下水道収入が4兆円を超えるものと試算し、そこに参入し、利潤をあげようとしている。コンセッションは、設備費は市に負わせ、経営権を握る。それは企業が最も利潤をあげやすい方式である。浜松の水道事業は天竜川からの水資源による優良な事業である。そこからの利益が莫大であるから、民間資本がコンセッションを狙うのである。もうからないところにはコンセッションの話は来ない。その狙いを見抜き、うまい計算にごまかされず、市民の命を支える水を守ろうとする姿勢を持つべきである。

7 コンセッションの問題点を課題と言い換え、美化することをやめよ

市は問題点を課題と言い換えている。民間業者への監視、市職員の技術継承の困難などに対し、市は民間業者の執行状況の監視を可能とし、水道技術力の維持も可能としているが、それは希望的観測に過ぎない。また、市は一定期間ごとに民間業者の選定をおこなうから「競争性も担保」としている。しかし、20年余の長期の運営権の売却は、競争性を奪うものであり、競争性は担保できない。民間業者の経営内容についても企業秘密の壁ができ、市の経営と比べれば、透明性は低くなる。経営内容をすべて監視することはできない。問題点は多いのである。

8 水道給水条例での料金上限設定は値上げの歯止めにならない

市は、コンセッションにより、値上げ幅が一定程度抑制でき、水道給水条例で料金上限を設定し、上限設定の変更時には議会で議決することなどもあげている。しかし、市は下水道で、民間会社とのコンセッション契約の月に下水道料金をあげ、その後、経営権を渡した。水道契約にあたっても、先に料金をあげる、上限設定を高いものにする、施設更新などで大幅値上げをせざるを得なくなるなどの事態が考えられる。コンセッションにすれば、すべてよくなるような宣伝は、偽りである。公営を維持し、市民に十分な説明をおこない、値上げする場合には、了解を得る方がよい。

9 水は共有財産であり、水が人権であるという視点を持て

水の民営化が進む中で、水が共有財産であり、水が人権であるという意識が共有されるようになった。この視点が大切である。国連は、20107月、総会で、「安全で清潔な水と衛生設備は基本的人権である」と決議した。水はみんなのもの、水を利益の対象とするな、民営化反対など、「水の正義」を求める世界の民衆の声が、この決議をもたらした。浜松市はこのような水に関する世界の民衆の声に耳を傾け、民営化をやめるべきである。

10 水道事業の公営を維持せよ

市は、官民連携を掲げ、効率化、職員数の削減、包括的民間委託をすすめてきた。さらにコンセッション導入をすすめようとしている。コンセッションを「リスクは行政に、利益は民間に」とする批判があるが、至当である。浜松の下水道契約の第50条では、住民が反対運動や訴訟などを起こし、運営権者に費用・損害がでたら、市が補償するものとされている。ヴェオリアなどの企業集団は、経営による住民との争いによる損害補償を市に押し付け、市にとって屈辱的な契約を強いているのである。コンセッション企業の利潤追求と無責任を象徴する条文である。このような企業の本質を見極め、長期の経営権の売却は中止し、水道は公営事業として強化すべきである。

それが、市民の命の水を守ることになるからである。