基調報告 
 水道の民営化・コンセッション導入を止めよう!

 

●コンセッション導入の動き

市民のみなさん!

いま、日本では官民連携(PPP)や民間資本参入(PFI)がすすめられ、コンセッションの名による水道の民営化がねらわれています。201812月には水道法を改悪し、水道でコンセッションの導入をしやすくしました。コンセッションとは、施設を市村町が所有したまま、長期間、運営権を民間企業に売却する方式です。それは、経営権の長期売却であり、民営化のひとつの形です。

1980年代から世界各地でグローバル化による規制緩和や民営化がすすめられ、社会資本に民間資本を参入させるようになり、水道の民営化がおこなわれました。

水が優良な投資の商品とされ、利権の対象とされたのです。

しかし、この民営化により、企業利益が優先される、経営が不透明になる、料金が値上げされる、水質が悪化するなどの問題がおきました。

そのため、水は人権!水はみんなのもの!水を利潤の対象にするな!の声があがり、世界各地で再公営化がすすむようになりました。水の権利を守る民衆の運動は、国連での201512月の「安全な飲料水と衛生に対する人権」に関する決議につながりました。

にもかかわらず、日本政府は、水道法を改悪し、水道の民営化・コンセッション導入をすすめようとしています。

 

●浜松市の動き

すでに浜松市は2011年ころから上下水道のコンセッション方式を検討してきました。浜松市長は水の民営化をすすめる外資系コンサルタントの新日本有限責任監査法人の関係者らと関係を深め、水道へのコンセッション導入を公言してきました。

浜松市は、西遠浄化センターが静岡県から浜松市に移管されると、20184月から下水道のコンセッションをはじめました。日本で初めてのことです。この下水道の経営はフランスのヴェオリアの日本法人やオリックスなど6社による特別目的会社のウォーターシンフォニーがおこなっています。新日本有限責任監査法人は、この導入から運営までの計画を立て、経営でのモニタリングをも担っています。

さらに浜松市は上水道でのコンセッションの導入をねらっています。2018年に入り、市は水道でのコンセッション導入可能性調査業務報告書を示しました。この報告書の原案も新日本有限責任監査法人が作成しました。

水道でのコンセッション導入の動きに対し、市民から水道民営化反対!の声があがると、2018年夏、市はホームページにQ&Aをたちあげ、コンセッションは完全民営化ではなく「運営委託方式」である、世界で民営化の契約や継続も多い、競争性は担保されるなどとごまかしの宣伝をはじめました。

市はコンセッションを、運営権の譲渡であり、売却ではないというのです。また、推進側が作成したフランスなどでの調査報告を利用して、コンセッションを美化し、浜松市が運営会社を統制できるかのように語っています。

 

●問題の多い水民営化

 水の民営化・コンセッションを導入しようとする側は、日本の上下水道の資産規模や上下水道収入を試算し、そこに参入して、利潤をあげようとしています。そのため、水施設の老朽化、水道職員の減少、水需要の減少などの問題が、コンセッション導入ですべて解消するかのような事業費の削減図を示しています。

しかし民営化すれば、水道職員の数は150人台から30人台になり、現場管理力が失われ、災害時など、いざというときに公務としての対応はできません。コストカットにより、安全よりも利益が追求されます。水道料金からは法人税、役員報酬、株主配当などが支払われることにもなります。これまで市の水道事業で利益を得てきた浜松市の民間業者の受注は減少します。運営会社の子会社、関連会社の受注が増加し、地域経済に影響します。企業秘密の壁ができ、情報が不透明になります。市民が民間会社にできる情報開示請求は限られたものになります

民営化は水をめぐる問題の解決策にはならないのです。水は人権であり、自治により市民のために運営されるべきです。民営化するのではなく、公営を維持し、課題を解決すべきです。

 

●外資系コンサルと水メジャーの狙い

 浜松市の委託を受け上下水道へのコンセッション導入計画を示してきたコンサル会社は新日本有限責任監査法人でしたが、2018年になって、EY新日本有限責任監査法人と名称を変えています。

新日本有限責任監査法人はロンドンを拠点とするEY(アーンスト・アンド・ヤング)という監査法人の傘下にあります。EYはフランスやイギリスの水メジャーと関係を持っています。監査だけでなく、PFI、コンセッション導入のための相談事業もおこなっています。

この監査法人でインフラPPP支援室長として、水道の民営化を進めてきた人物が福田隆之氏です。福田氏は2016年1月からは安倍内閣の菅官房長官の大臣補佐官になりました。福田氏は内閣の民間資金等活用事業(PFI)推進室で力を持ち、水道を管轄する厚労省をはじめ、各方面でPFI・コンセッションをすすめました。浜松市とも関係を強めました。

外資系コンサル会社出身者が、内閣官房でPFIを推進してきたのです。民間資金等活用事業推進室にはヴェオリアからの出向者も存在し、PFIを推進し、水道法を改悪する側で作業をすすめてきました。

浜松市の水道は年約150億円の事業費であり、1年に約10億円の利益があります。外資系コンサル会社に背後には、水メジャーやそこに投資して、利益をあげる投資ファンドがいます。水道民営化がすすめられている理由は、日本の上下水道のインフラを利用し、その長期の経営権をえて、投資し、莫大な利益をあげようとする集団がいるからです。浜松市民の水を守るためにコンセッションを導入するのではないのです。もうかるから企業がねらっているのです。

 

●「コンセッション有効」の結論ありきの調査報告

上下水道コンセッション事業の推進にむけ、民間資金等活用事業推進室は支援措置として、2016年度第2次補正予算で13.9億円を獲得し、浜松市などに補助金を出しました。

201612月に浜松市に水道事業コンセッション導入可能性調査として出された上限額は13700万円でした。この調査費はEY新日本有限責任監査法人に渡されました。その委託調査内容は、導入可能性調査、経営調査、資産調査、民間企業意向調査などでした。

このコンセッション導入可能性調査業務報告書については、情報公開によって、作成過程での議事録が明らかになりました。

その議事録では、新日本有限責任監査法人に対し、上下水道部の協議で水道コンセッションを平成34年度(2022年)に開始し、大原浄水場の改築をふくめ、期間は25年とすることを合意したと発言しています。また、報告書で、さまざまな手法があるなかで、コンセッション方式が最善の選択であること、事業期間及び範囲拡大を加味した上でもコンセッション方式が望ましいことを示してほしいと指示しています。

このような発言の下で、「管路付きコンセッション有効」という結論ありきのコンセッション導入可能性調査業務報告書が作成されたのです。浜松市は市民をあざむいてきたのです。

 

●水道民営化を止めよう 

市民のみなさん!

水は、命のみなもとであり、共有財産です。

わたしたち水道民営化を止めたいと思い、ここに結集しました。

水が外資系企業などの利権の対象とされようとしています。

命の水を売り渡してはいけません。

わたしたちは、水道の民営化のねらいを明らかにし、その民営化を止める声を全国に発信します。

力をあわせ、浜松をはじめ全国各地の水道民営化の動きを、止めていきましょう

   「1・13命の水を守る全国のつどい・浜松」実行委員会


「1・13命の水を守る全国のつどい・浜松」アピール

 

鈴木康友浜松市長は、コンセッションの名による上下水道での民営化をすすめてきました。2018年4月には下水道で民営化をはじめ、さらに水道で民営化を導入しようとしています。

しかし、水道事業の民営化は、水を商品にし、利潤の対象とするものです。それによって、市は事業能力を失い、地元の水道業者の経営に大きな影響を与えます。また、安全よりも利潤が追求され、水道料金の値上げや水質の悪化がおきかねません。さらに事業の透明性が失われ、外資系の水メジャーやコンサルタント会社に多くの利益が流れます。

すでに水の民営化では、世界各地で多くの問題がおきています。そのため、水が人権であることが広く共有されるようになり、再公営化がすすんでいるのです。

 

浜松では水道民営化の動きに対し、市議会で反対の意見を述べる、浜松市役所前でパネルを掲げる、集会を開いて問題点を訴える、浜松市と交渉する、ブログで問題を訴える、反対の署名を集めるなど、さまざまな活動がみられるようになりました。このような市民1人ひとりの行動が、本日の「命の水を守る全国のつどい」の開催につながりました。

 

浜松市議会では,水道の民営化に異議を唱える議員が増えてきました。そのなかで2018年11月末、鈴木康友浜松市長は、コンセッション方式について、制度設計が難しく、拙速に結論を出すことは避けたい、市民の理解もすすんでいないと述べました。

市長は2018年度中に可否を出すという方針を変更せざるをえなくなったのです。市長はコンセッションの名による水道の民営化を、延期するのではなく、中止すべきです。

市長はコンセッションありきの政策を転換し、コンセッションを「運営委託方式」とするごまかしの宣伝をやめるべきです。

 

2018年12月の水道法の改悪は、コンセッション導入をすすめるものであり、認めるわけにはいきません。水道法をめぐる国会の議論では、内閣府のなかに、水道民営化をすすめる企業であるEY新日本有限責任監査法人や水メジャーのヴェオリアの関係者が入り込んでいることが明らかになりました。このような関係者の利権により、官邸主導による水道へのコンセッション導入が仕組まれてきたのです。

 

水は公共の財産であり、市民一人ひとりのためにあります。水は営利企業のためのものではありません。命の水を儲けの対象にしてはいけないのです。

わたしたちは一人ひとりの行動をつなげ、日本各地で起こっている水道の民営化の流れを止めるとともに、水への権利と自治を強め、人びとが安心して暮らせる社会を作ることをめざします。

 

以上の主旨をふまえ、浜松市が水道の民営化計画を中止することを求めます。 

 

「1・13命の水を守る全国のつどい・浜松」参加者一同

 

浜松市長様

浜松市議会議長様