奈良・柳本飛行場の日韓共同説明板設置

 

  奈良・柳本飛行場の建設と朝鮮人

奈良県天理市の柳本駅の西方に大和海軍航空基地があった。この航空基地は柳本飛行場と呼ばれている。柳本飛行場の西方には屯鶴峰があり、そこに航空総軍の戦闘司令所がおかれ、地下壕が掘削された。この司令所が置かれた山の西方は大阪であり、そこには陸軍の八尾飛行場があった。

柳本飛行場の建設は1943年の秋ころから始まった。建設は海軍施設部が担い、大林組が工事を請け負った。海軍施設部には軍属として強制動員された朝鮮人も存在し、大林組にも動員された朝鮮人がいた。建設工事に動員された朝鮮人の数は2000人という。飛行場建設に向けて、飛行場予定地内の神社や寺院、墓地、灌漑用ため池は破壊された。

この飛行場建設にあたり、海軍は施設部内に「慰安所」を置き、朝鮮から女性を20人連行した。女性たちは晋州や統営から連行されたという。解放後、女性たちは地域に住む朝鮮人によって救済されたが、統営出身の一人は死亡し,19人が帰国したという。

柳本飛行場建設工事への朝鮮人の強制連行と朝鮮人「慰安婦」の存在は、地域の市民団体の調査によって明らかになり、1991年には動員被害者の金永敦さんと宋将用さんが来日し、証言した。市民の調査をふまえ、天理市の教育委員会は19958月、天理市のふるさと園に柳本飛行場の説明板を建て、強制連行と「慰安所」についても記載した。

 

  日韓共同説明板の設置

右派による強制連行や慰安婦の否定の煽動が強まるなか、天理市は20144月、説明板を撤去した。これに対し、調査をすすめてきた市民はあらたに撤去を考える会を結成し、再設置を要求した。統営の市民団体は韓国での説明板再設置の署名を集め、天理市を訪問した。さらに考える会は、天理市の姉妹都市である忠清南道の端山市の市民団体と共同し、2016年から日韓共同の説明板の設置運動をすすめた。

日韓市民による説明文の議論を経て、飛行場跡地の農地の隅に説明板が建てられ、2019413日、除幕式と現地調査がもたれた。除幕式に先立って110人が参加しての集会が天理市の公民館でもたれた。除幕式には民団と総連、韓国の市民団体の代表も参加した。

新設の説明板には、飛行場地図とともに、海軍施設部が飛行場建設をすすめ、大林組が請負ったこと、建設を担った主力が朝鮮人だったこと、3人の朝鮮人が死亡したこと、慰安所がつくられ、朝鮮から女性が連行されたこと、事実を伝え、平和を希求することなどが記されている。

除幕式後の現地調査では、ため池近くの朝鮮人飯場跡、滑走路跡、飛行場用暗渠、防空壕、掩体壕基礎、若宮神社の班場跡、海軍施設部跡の建屋、慰安所跡地、戦後の国語講習所跡地などを、解説とともに歩いた。防空壕は当時のまま残っていた。海軍施設部の建物も朽ちかかってはいるが、残存していた。遺跡は歴史を物語る。


柳本飛行場の防空壕             海軍施設部跡

今回の日韓共同説明板の設置は、朝鮮人強制労働や慰安所の存在を隠蔽する動きに抗し、市民の共同討議によって事実を伝え、平和を求める取り組みである。   (T