8・25 大島堅一講演 再稼働より廃炉が安い!?



2019年8月31日、静岡市内で大島堅一講演「再稼働より廃炉が安い!?」があり、100人ほどが参加した。主催は浜岡原発の再稼働を許さない静岡県ネットワーク。
大島さんの話で印象に残ったことをあげる。
・日本政府はいまも、原発のコストは安いと宣伝している。
・原発のコストには発電コストだけでなく、社会的費用、事故リスク対応費用などを入れるべきだ。
・かつては原発1機の建設費は3000から4000億円だったが、いまは安全対策が求められ、1兆円近いものになった。
・日立も三菱も海外建設をあきらめ、東芝は赤字となり、半導体部門を売却した。
・福島原発に事故コストは23・5兆円にまで上がったが、今後さらに増加する。
・汚染土壌の再利用が、計画されている。道路の下や堤防に使うために、「実証事業」がおこなわれている。
・原発はコストが高くて動かせないし、作れない状態である。
・浜岡3・4号機は廃炉にしたほうが安い。
・原発は放射性廃棄物を永遠に処理しなければならない、罪深いもの。
・原子力損害支援賠償機構をつくり、東電を政府が支援している。国が借金をして、東電に支援金を渡している。汚染者負担ではなく、消費者に負担が転嫁されている。
・原子力は瀕死の状態、原発は万人を不幸にする。
・原発再稼働反対は保守層も考えている。反対は文化になった。
・負の遺産をこれ以上残さず、再稼働させずに原発の息の根を止めよう。

講演後、県ネットの討論がなされた。以下は現状の提起。


原発を巡る状況

 

 世界の原発を巡る情勢は脱原発に急速に向かっている。日本はその流れに抗して原発を重要なエネルギーと位置づけ、強引に原発推進政策をとり、他国があきらめた核燃サイクルさえ捨てようとしない。そこには福島事故などまるでなかったかのように棄民政策を押し進めている。安倍自公政権は原子力ムラと一体となって原子力発電を重視してのエネルギー政策を推し進めている。その中では原発ゼロ法案の審議は棚上げされたままである。

 

1.再稼働状況

 再稼働された原発は、九州電力、四国電力、関西電力の加圧型の原発が先行し9基である。福島事故の沸騰水型原発の再稼働はいずれも規制庁に審査を申請しているものの新潟の柏崎刈羽・東海第2原発をのぞき審査は大幅に遅れている。

  いずれの地でも市民運動そして法廷での闘いが強力に進められている。最近、特定重大事故等対処施設(特重)の完成が遅延していることが規制庁から指摘され、特重が予定通り完成しなければ、原発停止もあり得ると言われている(川内1・2号機来年3月停止)。

 今最も注目されている原発は、茨城県東海村の東海第2原発(日本原子力発電・沸騰水型)の40年を超えての再稼働を巡る状況である。首都圏を巻き込み大反対運動が起こっている。この原発の再稼働を巡る成り行き浜岡原発再稼働に大きな影響を与える。

 

2,浜岡原発を巡って

   現在規制庁への審査請求は、浜岡3・4号機である。4号機を先行させ審査が行われている  が、規制庁による津波高などに見られように規制中からの注文は多く合格のめどは立っていない。南海トラフ巨大地震と活断層の存在は避けて通ることはできない。

 川勝県知事 現状では再稼働は認められない。琉球新報の全国の県知事に対する辺野古基地県民投票結果についてのアンケートで、川勝知事は「民意を尊重すべき」と答えた。 この答は岩手県知事と2人だけであり。このことにより知事は再稼働反対へさらに一歩踏み込んだと見受けられる。

 周辺自治体 5月の各マスコミアンケートは浜岡再稼働に賛成する首長はゼロ、反対は4 であり、地元意識は周辺4市(御前崎、菊川、牧之原、掛川)から拡大し、UPZ圏(31q) さらに全県下に広がりつつある。規制庁の合格証が出た段階でこの状況がどう変化するか想定しながらの活動が求められている。

 中部電力 見学会の実施、電通をはじめとしたマスコミでの宣伝(電事連ー石坂浩二起用)、安全対策工事の継続(既に4,000億円を投入)、東海第2への資金援助、核のゴミ対策として青森に事務所設置し再稼働へ向け着々と歩を進めている。

 

 県民の動向 福島事故から8年以上が経過し、原発反対に積極的ではないが問われれば「反対」「不安・危険」との答が多数を占める。

 反対運動 再稼働を許さない静岡県ネットワーク(県ネット)           

            UPZ市民団体交流会

            各市町での反対運動

  などの市民運動団体を中心に脱原発運動が展開されている。

  また、東京高裁、静岡地裁、静岡地裁浜松支部の3カ所の法廷において闘われている。

 

 

原発を巡る課題は大きくは次のように分かれる。

●安全・危険とそれに付随する問題

再稼働(40年問題)、廃炉、新設、過酷事故での避難問題、核のゴミ、安全協定、規制委員会とその審査及び規準(地震、火山、テロ)、放射線に関する副読本、電力会社の宣伝など

●経済性とそれに付随する問題

 エネルギー政策、自由化(新電力)、発送電分離、核燃サイクル、原発輸出、太陽光発電の 制度改悪、他のエネルギーとのコスト比較など

●3・11事故に関わる課題

 福島支援、国の棄民政策と被災者の生活保障、復興とオリンピック、事故の責任追及(国、東京電力、原発メーカー)、賠償、甲状腺ガンと医療、汚染水処理、新安全協定締結問題、 日本版チェルブイリ 法の制定、放射能汚染防止法の制定など