2・2尾林芳匡「水は誰のもの」

 2020年2月2日、浜松市内で、尾林芳匡弁護士の「水は誰のもの? 欧州の水道再公営化から見えてくるもの」と題しての講演会が、浜松市の水道民営化を考える市民ネットの主催でもたれた。尾林さんはパリ、ロンドンでの再公営化を目指す動きを2019年11月に調査した。報告はつぎのようなものだった。
 
 パリでは水道の民営化によって1987年に官民混合の会社が設立され、それはパリ市が7割、ヴェオリアとスエズの子会社がそれぞれ14%を出資するものだった。民営化のなかで、水道料金は約20年で174%上昇し、巨大企業はグループ会社に下請けさせた。これに対し、市民は市長を交替させ、2010年に再公営化させ、新たに水道公社を設立させた。市民参加の下で、水事業は環境保全を含む活動へと転換した。コンセッションとは、もともと「利権」の意味であるが、日本では運営権と訳されている。それは本質をごまかす訳である。
 イングランドでは民営化によって債務がゼロから560億ポンドになった。投資家への報酬が借金になった。利潤追求により、浄化部門への投資はなされない。市民団体は水道民営化は経済的にも道徳的にも間違いと再公営化をすすめている。民営会社のテムズウォーターの大株主はカナダの投資会社である。アシュフォード浄水場では、設備の更新は不十分なままである。
 民営化はいきづまり、再公営化の動きが強まっている。日本でも反対の世論を高めていこう。