2021224

浜松市長様

浜松市デジタルスマートシティ推進事業本部長様

(パブリックコメント)

                                        人権平和・浜松

 

浜松市デジタルスマートシティ構想(案)と浜松版MaaS構想(案)についての意見書

         

近年、新自由主義政策によって公共財など公的分野への民間資本(企業)の参入がすすめられている。市民の福祉と自治のための施設・組織が利潤の対象とねらわれているのである。それは、命よりも金の政策となり、多くの問題を生んでいる。近年、政府が「国家戦略」としてすすめるスーパーシティ、そして浜松市がすすめるデジタルスマートシティもこの動きの一環である。

1の問題は、行政の個人情報などがビッグデータとされ、利潤の対象とされることである。ビッグデータとは単に膨大なデータという意味だけでなく、分析によって経済的な価値を生むことができるデータのことである。それへの参入によって利潤をえることができるのである。行政の持つ個人情報などは本来、行政内部に秘匿されていなければならないものであるが、その情報のデジタル化や運用のために企業が参入することになる。

公共サービス部門が利権の対象となり、利潤を求め、企業が名乗りを上げる。参入企業への支払いの源泉は市民の税金である。利益を上げようとしている者たちはその行動を「未来投資」などと美辞麗句で飾り立てるが、実際は市民・公共財から搾取しようとするのである。

2の問題は、政府による地方統治の強化である。ビッグデータが収集され、それが政府の情報基盤ヘと集約される。「日本創成」や「地方創生」などと聞こえのいい宣伝がなされているが、中央政府による情報収集がすすみ、地方統治の強化、情報監視の強化がすすんでいる。

マイナンバー制度の導入もその一つである。政府は事あるごとにマイナンバーへの諸情報の関連付けを狙い、個人情報ヘの管理強化をすすめようとしている。「広報はままつ」(20212月)の市長コラムの題は「マイナンバーカードが導く未来社会」である。そこで市長は市民にデジタル基盤のためにカードの取得をすすめている。そこには「マイナンバーカード」を危惧する、あるいは批判する市民ヘの配慮などは全く示されていない。思慮無き文章である。

そのような市長が率先して政府のスーパーシティ型国家戦略特別区域指定に応募した。今すぐ撤回すべきである。

3の問題は、地方自治の破壊である。スーパーシティの推進者達はスーパーシティによるデジタル化によって、自治体の職員が半減し、市町村を越えての圏域での行政化がすすみ、GaaS Government as a Service電子政府)によって団体自治が終わるなどと記している。このような考え方は、地方自治体による個人情報の管理、自治体職員による福祉労働、地方自治での主権者の活動などをみようとしないものである。それは地方自治を破壊することにつながる危険な発想である。

 すでに行政大型合併により、地方自治の破壊がすすんできた。保健所は統合されて、激減した。新感染症パンデミックに対抗できる職員数は減らされ、医療機関も減らされ、医療崩壊の危機も現実のものとなっている。求められているのは改革の名による職員削減ではなく、職員補充や医療機関の整備である。デジタル化はそのような作業がスムーズに行くように利用されるべきものである。浜松市がすすめる「デジタルファースト」の動きは間違っている。デジタルは利用するものであり、福祉増進、生命保持の基本はアナログな人と人との関係である。そのようなアナログな関係を重視し、地方自治を再建すべき時である。

 第4の問題は、浜松市のコンサル企業ヘの依存の問題である。

近年、浜松市はコンサル企業に依頼して報告書を記す、あるいはコンサル会社からの派遣社員を「フェロー」として採用し、事業をすすめるようになった。コンサル会社の意向を受けての事業案などをみると、プレゼン資料がそのまま説明資料として公開され、論文としては示されない。そのため論理的に思考して理解をすすめることができない。

浜松版MaaSの事業案では、最後に用語の解説が41個もある。

MaaSを「「Mobility as a Service」の略。複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス。観光 や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となる」とし、モビリティを「乗り物等、人の移動に関わることやモノ」などと説明しているが、ニューノーマルを「新型コロナウイルス感染症の流行を経て移行する人々の行動・意識・価値観の新たな常態・常識のこと」と説明するに至っては、説明者による用語の拡大定義といわざるをえない。

浜松市デジタルスマートシティ構想(案)にも用語解説が59もある。たとえば、アイデアソン 「「アイデア」と「マラソン」を組み合わせた造語で、アイデアの創出を目的としたイベントのこと」、ハッカソン 「「ハック(プログラムの改良)」と「マラソン」を組み合わせた造語で、ソフトウェア開発に関わる人々が集まって、集中的にプログラムやサービスの開発を行うイベントのこと」などと解説されている。このような説明書で、どれだけ市民が理解できるというのだろうか。

このようにパブリックコメントを求める資料は、浜松市民への説明文書として採用すべき質を備えていない。市民に対し、わかりやすく説明するという姿勢がみられない。最初から説明文書を作成し直すべきである。

 

浜松市はコンサル企業やそのコンサル企業の説明する内容によって参入することになる企業の利潤追求の場ではない。地方自治による市民の人権の擁護と福祉の増進の場である。主権者である市民に対しては、丁寧にわかりやすく説明し、意見を求めるべきである。アナログ重視の精神を持ち、デジタルも利用した行政サービスをおこなうべきである。個人情報の保護に努めるべきであり、福祉の増進をすすめるべきである。

浜松市はデジタルスマートシティ構想と浜松版MaaS構想を拙速にすすめてはならない。スーパーシティ型国家戦略特別区域指定への応募は撤回すべきである。浜松市の動きに対し、「くそ食らえ」、「まっぴらごめん」、「マイナンバーカードなどいらん」という市民の声があることも記しておく。

最後に再度、強調する。市民の福祉のための個人情報が、利潤をえるための情報、監視のための情報(ビッグデータ)として狙われているのである。浜松市長及びその職員は市民の情報保護のための施策をおこなうべきである。