大軍拡と基地強化にNO!西日本交流集会の報告
2024年9月21日・22日と広島県の呉で「知り つながり とめる 大軍拡と基地強化にNO!西日本交流集会」がもたれ、オンラインを含め150人ほどが参加した。集会では、広島、沖縄、佐賀、鹿児島、香川、京都など各地での戦争準備に反対する活動が報告され、運動のネットワーク化が議論された。
以下、各地からの報告を聞きながら、感じたことをまとめておく。
●ミサイル軍拡と「第2特科団」の設置
現代の戦争の特徴は、宇宙の軍事化、先制攻撃のためのミサイル防衛(軍拡)、戦時と平時の一体化(シームレス)、AI・ロボット兵器など戦争商品の開発などがあげられる。アメリカのグローバルな戦略の下、安倍政権は2015年、日米防衛協力指針を再改訂、戦争法を制定した。「存立危機事態」の名で米軍と共同の軍事作戦を行うものとし、その準備をすすめ、2022年12月には安保3文書を改訂し、敵基地攻撃能力(反撃能力)を認めた。
22年の国家防衛戦略では、中国を脅威とみなし、スタンドオフミサイルの増産、配備をすすめ、火薬庫増設など戦争継続能力を高めるとした。その下の防衛力整備計画には陸上自衛隊に「スタンドオフミサイル部隊」を設置するとあった。
その実態が大分の報告から見えてきた。2014年4月、大分県の湯布院の西部方面特科隊が「第2特科団」になったのである。
この部隊は、湯布院に本部と本部中隊、第301多連装ロケット中隊が置き、第5地対艦ミサイル連隊(熊本・健軍)、第7地対艦ミサイル連隊(沖縄・勝連)、西部方面特科連隊(北熊本、155ミリ榴弾砲)など5つの部隊で編成される。来年には湯布院に第8地対艦ミサイル連隊が置かれることになる。湯布院の日出生台演習場では日米の共同訓練も行われている。オスプレイも飛来する。現在の12(ひとにい)式地対艦ミサイルの射程は200キロほどであるが、その射程を1000キロ以上にしようとしている。沖縄の宮古島や石垣島のミサイル部隊は勝連の第7ミサイル連隊の下となり、射程が1000キロとなれば、中国本土にも撃ち込むことができる。第2特科団は敵基地攻撃能力を持つ「スタンドオフミサイル部隊」であり、湯布院はその拠点となったというわけである。
湯布院では「湯布院駐屯地「敵基地攻撃ミサイル」問題を考えるネットワーク」を結成、抗議行動をおこなっている。
●各地での弾薬庫建設と反対運動
ミサイルには保管施設が欠かせない。政府はミサイル軍拡に対応して大型弾薬庫を130棟、建設する予定である。候補地には青森の大湊、京都の舞鶴、祝園(ほうその)、大分、佐世保、宮崎のえびの、鹿児島の鹿屋、さつま、奄美の瀬戸内、沖縄などがある。
陸自の大分分屯地(敷戸弾薬庫)では7個の大型弾薬庫を新設し、計9棟の弾薬庫にしようとしている。分屯地周辺には学校や病院などが存在し、約4万人が居住している。これに対し、「大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会」を結成、住宅密集地に弾薬庫を建設することは平和に生きる権利や軍民分離原則に反するものとし、反対運動をしている。同会による懇談会用映像「「大軍拡」の背景と平和への展望」が問題点を簡潔にまとめている。https://www.youtube.com/watch?v=wOqiGsGXP7k
京都の南部、精華町と京田辺市に、陸自宇治駐屯地祝園分屯地がある。1940年に陸軍の祝園弾薬庫として設置された。この弾薬庫は大阪の陸軍造兵廠のための弾薬庫だった。現在、この一帯は関西文化学術研究都市とされ、人口も多い。現在10棟の弾薬庫があるが、そこに新たに8棟の弾薬庫を建設するという。12式地対艦ミサイルも貯蔵される。海上自衛隊との共同使用も想定されている。地元では1960年に防衛庁、陸自、精華町長との三者で施設の拡張はしないという確認書をとっている。その闘いを受け継ぎ、「京都・祝園ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク」が結成され、ミサイル軍拡に反対する活動がはじまった。
鹿児島のさつま町でも弾薬庫建設の動きがある。さつま町が防衛施設誘致のために町の全域を提供する姿勢を示すなかで起きた。これに対し、「さつま町の弾薬庫建設計画を考える会」が反対運動を始めた。
沖縄の辺野古では弾薬庫の建て替え工事が行われたが、完成した4棟は特殊兵器用の貯蔵庫であり、非伝播性の壁を持つものだった。それはトライデントミサイルの貯蔵施設と同型のものであり、核兵器用貯蔵庫とみられる(山本眞直「辺野古弾薬庫「再編」の狙い今、明らかに」2023年)。
●沖縄でのミサイル軍拡への抵抗
沖縄では中国との戦争を想定した戦争準備、ミサイル軍拡の動きの中で2021年に「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」が結成された。大衆集会の開催とともにメルマガを発行、24年8月には285号が出されている。
沖縄のうるま市には陸自の勝連分屯地にミサイル連隊があり、そこに24年3月にミサイルが搬入された。それに対し、「ミサイル配備から命を守るうるま市民の会」は「長距離ミサイルはいらない、沖縄を戦場にするな!」と阻止行動をとった。搬入はされたが、基地の入口で1時間にわたり阻止し、市民の反対の意思を示した。うるま市に建設されようとした訓練場に対しては、地元自治会が反対の意思を示し、党派を超えて反対運動を進め、世論を盛り上げた。24年3月の集会には1200人を超える市民が結集した。メディアも大きく報道し、訓練場建設の撤回を勝ち取った。
石垣島にもミサイル部隊が配備され、当初は47ヘクタールだった基地がさらに21ヘクタール拡張されようとしている。電子戦部隊も配備されるという。日米だけでなくNATOと一体化するような訓練がすすんでいる。石垣港も軍事利用される動きである。さらに九州などへの避難計画も立てられた。戦争を想定した動き、石垣島の軍事要塞化に対し、「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」が抗議運動を進めている。
●港湾・空港の軍事化
このようなミサイル軍拡に会わせて物資・兵員の輸送ために港湾・空港の軍事利用が狙われている。2024年に入って、鹿児島の2つの空港、6つの港をはじめ、28の空港・港湾が「特定利用空港・港湾」に指定された。
佐賀空港には陸自駐屯地が置かれ、オスプレイが配備されることになった。佐賀では「オスプレイ反対住民の会」、「オスプレイ裁判市民の会」が反対の活動をすすめている。「オスプレイストップ!9条アクション佐賀」は、2023年11月の屋久島沖でのオスプレイ墜落事故を受けて、佐賀のゲート前でオスプレイ撤去を訴えて、非暴力の抵抗の座り込み行動をおこなっている。佐賀のオスプレイは敵前上陸部隊である佐世保の陸自・水陸機動団(2018年創設)、湯布院の第2特科団の輸送などにも利用されることになる。
呉の日本製鉄瀬戸内工場跡地の防衛拠点化もこの動きのなかにある。この地を国が買い取り、装備品整備・製造、鑑定の配備訓練、港湾などの拠点とする計画がすすんでいる。2025年3月には呉基地に陸海空共同の「自衛隊海上輸送群」が置かれるが、それに対応した動きである。
海自の呉基地、陸自の海田駐屯地、米軍の岩国基地に近く、敵地攻撃にむけての補給と輸送の拠点となるわけである。呉には、護衛艦、揚陸艦、潜水艦、空母に改造された「かが」等多数の艦船がある。それが「戦争する国」の部隊として動く。「自衛隊海上輸送群」の設置は呉の戦争拠点化を示す動きだ。
それに対し、ピースリンク広島・呉・岩国や「日鉄呉跡地問題を考える会」などが抗議の活動を展開している。
このように中国との戦争を想定してのミサイル軍拡、市街地での弾薬庫建設の強行、空港・港湾の軍事利用、地域の戦争の拠点化がすすんでいるが、その動きは各地で民衆の反戦平和の新しい運動を形成している。軍拡の動きを共有し、戦争反対の動きを結び、平和を形成するというグローバルな反戦運動の形成に向けて力を合わせるときである。(竹内)