「戦後60年」被害者とともに
日本の過去の清算を求める国際集会・東京

 

2005520日から21日にかけて、東京で「戦後60年」・被害者とともに日本の過去の清算を求める国際集会がもたれた。20日には議員フォーラム、全体集会、21日には分科会・全体集会がおこなわれた。集会には約200人が参加した。

20日の議員フォーラムでは韓国・台湾・フィリピン・日本から過去の清算に向けての活動報告がなされた。

韓国民主労働党の李永順さんは東北アジアの平和のために、日本が過去の戦争被害者に個人賠償をおこなうとともに朝鮮半島分断の克服によって国際レベルでの冷戦の実質的な終息を実現し、平和への新たなオルタナティブをつくりあげていくべきとした。台湾の民進党の荘国明さんは、ここに出席している国民党の議員とはさまざまな点で意見の相違があるがこの歴史問題では同じ認識を持つとし、日本の過去の正当化に対するアジアでの批判の声を踏まえ、日本が過去の清算をすすめることを求めた。

議員フォーラムでは、日本の右傾化を危惧する声とともに、「訴訟では間に合わない、被害者はつぎつぎに亡くなっている。今すぐ日本は立法をおこない、アジアの戦争被害者への個人賠償をおこなう態勢をつくるべき」という意見が強く出された。

レセプションでの交流ののち、全体集会では、韓国・中国・台湾・フィリピン・アメリカ・オランダからの参加者の被害証言と意見表明がおこなわれた。

そこでは、かつては日本人として連行し戦争が終わると外国人として補償しないのは道理がない、一四歳のときに日本軍に「慰安婦」にされ時には首を絞められた、日本は今もわたしたちを人間として差別し見下している、日本の過去の清算がなければアジアはひとつになれない、国連は戦勝国の組織であり過去の清算なくして常任理事国入りするなど考えられない、人々に事実を伝え署名を国連に出そう、などといった証言や意見がつぎつぎに出された。

21日には、「慰安婦」・真相究明・強制労働・教科書などの4分科会がもたれ、活発な討論がもたれた。「慰安婦」分科会では世界同時デモの開催への取り組みや韓国での真相究明法に続いて日本での立法解決をすすめることなどが話された。真相究明の分科会では、日本でも強制動員真相究明のネットワークをつくること、自治体から埋火葬認許証を提出させて真相を明らかにすること、被害実態や各地に残る遺骨の把握などが話された。

強制労働の分科会では、各国の被害者・研究者が被害状況を話し、日本が60年たっても被害者を救済していない実態が示された。教科書の分科会では、共同の教科書づくりをすすめつつ、「つくる会」教科書の採択を阻止することが提起され、「つくる会」教科書に対して国家主体であり、戦争をする人間づくりのためのものであるという批判が出された。

真相究明の分科会についてここでみておけば、分科会では細菌戦の実態、韓国強制動員被害糾明委員会、散在する朝鮮人遺骨問題などが提起された。ここでだされた主な意見をまとめておけば、散在朝鮮人遺骨の問題は、戦後60年の未清算と遺族の苦しみの歴史を象徴するものである。最近はじめた政府の調査は、外務省が主導するその場しのぎのものであり、放置遺骨に対しては国際的な原則に従って、全国的な調査などをふまえての誠実な対応が求められる。遺骨を犠牲者の生命を引き継ぐものとし大切に扱い、遺骨に対する遺族の決定権を尊重し、返還の際にはその連行の歴史が糾明され、政府と企業による謝罪・賠償がともなわれるべきである。また、その史実の継承・記憶がもとめられている。このような意見が出された。

全体会では、今何をすべきかが討論された。日本政府が今も侵略戦争と認めていないこと、国民的意識においても心底から侵略戦争といえる人が少ないこと、戦後60年アジアの被害者の問題が救済されていないこと、一方で靖国参拝を公然とおこなうようになったこと、韓国の遺族に知らせぬまま靖国に合祀をしてきたこと、抗議のデモをひとくくりに「反日」とし、その抗議の本質的問題が隠蔽されていること、今も差別意識がつづいていること、このような日本政府の姿勢を変えるためにはどのような運動が必要なのか、後世に恥じなき運動をしていくこと、などさまざまな視点からの発言が続いた。

討論の中で、「つくる会」教科書の不採択をすすめること、各国市民運動の平和へのネットワークをつくること、世界的共同行動を形成すること、日本の国会での「慰安婦」立法をすすめ、さらにその他の被害に対しても立法解決をもとめること、日本の閉ざしてきた良心の門をあけ、謝罪と賠償をとうしての和解をすすめること、などの方向性が出された。

現在の日本の動きは世界の平和を求める人々と敵対するものになっている。2000年の女性国際戦犯法廷以来、今年3月の「慰安婦」問題の会議につづき、久しぶりにもたれた国際集会だった。戦争犯罪の実態をあきらかにし、戦争被害者個人への賠償権を確立することは、戦争国家の道を阻み、不再戦にむけての力になるといえるだろう。 (竹内)