『浜松の戦争史跡』を作成して                                 

 20058月に『浜松の戦争史跡』という本を出しました。この本は、浜松の陸軍航空基地関連の史跡、浜松空襲関係の史跡、浜松の神社や寺院にある戦死者追悼碑、浜松の朝鮮人強制労働跡などについて記したものです。

 浜松にはかつて陸軍の航空部隊があり、陸軍の爆撃の拠点とされていました。高射砲部隊、毒ガス航空戦部隊、本土決戦部隊も配備されました。その跡地の一部が航空自衛隊浜松基地となっています。

 この本では浜松から派兵された航空部隊が、アジアでどのような爆撃をおこなったのかという加害の歴史についてもまとめました。

豊橋や静岡の歩兵部隊に動員された人々がどのような形で死を強いられたのかについても、墓碑などからできるだけ具体的に記しました。

陸軍航空基地と航空関連軍需工場が集中した浜松は米軍の激しい空爆を受け、3500人余の市民が死亡しましたが、その史跡についても爆撃の状況をふまえて書きました。

浜松の地下壕や強制労働についてもまとめました。

 死者が「英霊」や「忠魂」として刻まれている実態から、死んでもなお国家が死者を精神的に奪っている状況も示しました。

 戊辰戦争からアジア太平洋戦争までのさまざまな史跡を紹介し、民衆の視点から、史跡を通して戦争を再構成する作業をおこないました。

ここで紹介した史跡は約130箇所です。現地を歩きながら感じた反戦平和への思いも記しました。まだ多くの箇所が残されていますが、調査は今後の課題です。

 日本の各地にここで紹介したような史跡があります。さまざまな碑文から、戦争賛美の言葉の裏にある民衆の戦争死への悲しみや怒りを読み込んでいく作業は、これからも必要なことであると思います。

 碑や戦争遺跡は、読みとる側の想像力をもとめていると思います。

 これまでの調査をふまえて、この調査のために浜松の史跡を歩きはじめたのは2003年の終わりでした。ちょうど自衛隊のイラク派兵の時期と重なりました。浜松基地からもイラク派兵があり、浜松を再び戦争の拠点にしてはならないという思いを強く持ちました。

この本が各地で戦跡調査をすすめるみなさんの参考になれば幸いです。

なお関連論文として静岡県近代史研究会の会誌『静岡県近代史研究』に「浜松陸軍飛行学校と航空機毒ガス戦」「戦争の拠点・浜松(1)」(満州侵略戦争と浜松)『戦争の拠点・浜松(2)』(中国侵略戦争と浜松)を書いていますので、関心のある方はお読みください(第282930号)。

浜松の戦争史跡の頒価は一冊500円(送料別)です。FAX 053 422 4810へと申し込んでください。