灯 里 檀
霧の中を走っている
霧の中を走っている
とろり、とろりと走っている
仲間のひとり、ひとりの顔を車窓に思い浮かべ、
そのひとを語っては、さざめく
「ああ、俺たちは宝に囲まれているなあ!」
あなたが嘆息する
そうだね、
列車に乗るからと今別れてきたひとたちも
そういうひとたちだったね
霧の中を走っている
霧の中を走っている
霧の中の暗闇を走っている
いつ晴れるとも、明けるともわからない
家へ帰る術のある駅の方角もわからない
けれど、
仲間を想うときに灯のともる、この至福
(二○○六・十二・十二)